サイの力
ミスト王国の兵士達がクリスライドの降伏勧告を聞き入れて武装解除をして降伏してからは全て早く終わった。
ヴィヴィアンからの報告を受けて王都へとやって来たノルド達とジェラードを初めとする「キマイラ」は、未だに気絶しているクリストミスと王城に立て籠もっている王族を拘束した。次にクリストミスが目覚めた時、彼は王城の地下牢の中で全てが終わった後なのだが、それは別に話である。
クリスライドがフランメ王国に亡命しているのでミスト王国の王族としての権利を放棄しているため、代わりにミスト王国の代表者となったノルドは国内の混乱が収まり次第、話し合いを望みたいという使者をフランメ王国を初めとする四ヵ国に送った。こうして本当に自分達の任務が完了したのを確認したサイはフランメ王国へ帰り支度をしながら安堵の息を吐いた。
「ふぅ……。それにしても無事に内乱が終わってよかった。こう言うのは何だけど、案外呆気なく終わったな?」
「はぁ?」
サイの言葉にジェラードが呆れたような顔を向けてきた。よく見ればジェラードだけでなく、他の皆も似たような表情や視線をサイに向けていた。
「何だよ? 何か変な言ったか?」
「言ったわよ。サイ、貴方は今回の作戦がどれだけ凄いことなのか分かっていないの?」
マリーはサイの言葉に答えると、今回の任務の結果について説明する。
「今回の内乱。王都の中央に置かれたゴーレムトルーパーの排除に、私達や各国の上層部は王都の壊滅も覚悟していたわ。でも実際には国王のゴーレムトルーパーだけを迅速に排除して王都だけでなく、ノルド将軍と国王の勢力からも被害を全く出さず内乱は終結。しかも終結までの時間は内乱が起こってから数日しか経っていない。こんな今まで聞いたことないわよ」
「そうなのか」
マリーに説明されても今一つ実感が湧かないサイがそう言うと、彼女はため息混じりに口を開く。
「そうなのよ。サイ、貴方はいい加減、自分がとんでもない存在だということを自覚した方がいいわよ。今回の任務は貴方がいなければここまでの結果は得られなかったのだから」
マリーの言葉は一切の誇張のない事実である。サイという存在がいなければミスト王国の内乱は終結までもっと時間がかかって大きな被害出ていただろうし、それの終結に大きく貢献した彼の力をマリー達は改めて知ることになった。
空を飛んで世界で唯一遠距離攻撃も可能なゴーレムトルーパー、ドランノーガ。
遠く離れた場所からも情報のやり取りが可能なピオン達四人のホムンクルス。
そして近づくことができればゴーレムトルーパーを一瞬で消してしまえる「倉庫」の異能。
比喩でもなんでもなくサイは一国の軍隊と戦って勝利するだけの力を持っており、その事実を正しく理解していないのは本人だけであった。
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