基地へ向かう途中の会話
サイとピオンがゴーレムオーブからドランノーガを造ったばかりでまだヴィヴィアン、ヒルデ、ローゼの三人がいなかった頃。彼らは初めてのドランノーガの飛行訓練中に、アックア公国の街を襲おうとしている猪のようなモンスターの群れを発見して、それを撃退したことがある。
そのモンスターの群れはネズミに似た単独出産が可能な生物を食べたことにより、自己分裂能力を得た一匹のモンスターが増えたものであった。アックア公国の街へ突撃しながら数を増やし続けるモンスターの群れは通常の軍隊はもちろん、現代のゴーレムトルーパーではとても対処しきれず、もしサイとピオンがモンスターの群れを発見していなかったらそのアックア公国の街は今頃壊滅していただろう。
こうしてモンスターの群れを撃退してアックア公国の街を救ったことが切っ掛けとなり、サイとピオンはアックア公国とフランメ王国両方の上層部に名前を知られてここまで早く出世をする事が出来た。
そして今回のアックア公国軍と行う合同任務は、これと同種のモンスターの群れの討伐であった。
「それにしてもあの猪みたいなモンスターの群れが毎年やって来るアックア公国の風物詩だとは思いませんでした」
アックア公国軍の基地へと向かっている馬車の中でピオンは、あの時ドランノーガの主砲で全てを焼却した猪のようなモンスターの群れのことを思い出しながら呟く。現在馬車の中には彼女の他にサイとヴィヴィアン、そしてビークポッドの四人が乗っていてヒルデとローゼ、クリスナーガとブリジッタの四人は別の馬車でアックア公国軍の基地へ向かっていた。
「いや……。風物詩というのは少し違う気がするぞ?」
「じゃあ名物ですか?」
「そんな名物、俺は嫌だな……」
サイがピオンに話しかけてその言葉を聞いたヴィヴィアンが言うと、流石にモンスターが自国の名物であるのは嫌なビークポッドが苦い顔をした。そしてビークポッドの気持ちが分かるサイは彼に一つ頷いてから質問をする。
「そうだな。それでビークポッド、モンスターの群れは一体何処に現れたんだ?」
アックア公国での拠点である屋敷で二つ目の合同任務の内容をブリジッタから聞いた日から今日で三日が経っていた。今彼らがアックア公国軍の基地へ向かっているのは、討伐するモンスターの群れが見つかったので、合同任務の準備に取り掛かるためであった。
「ああ、これを見てくれ」
サイに聞かれてビークポッドは懐からアックア公国の地図を取り出して広げると、地図のある一点を指差した。
「ここだ。このアックア公国の東にある海岸付近。この辺りで目的のモンスターの群れらしき影を見たという報告があったそうだ。ただ……」
「どうした? この場所に何か問題でもあるのか?」
言葉の最後に戸惑いを口にするビークポッドにサイが聞くと、彼は顎に手を当てて不思議そうな顔をしながら口を開いた。
「いや、な……。例の猪のようなモンスターの群れは、毎年何処から現れてその現れる場所も毎年違うのだが、何故かこの場所の辺りでは今まで現れたことがなかったんだ。それが不思議でな……」
「それってどういうことですか? モンスターの群れに私とマスターが戦った時のような異常が起きていると?」
ピオンが言う異常とはモンスターの群れが自己分裂能力を得た時の事で、ビークポッドは彼女の言葉に首を横に振る。
「そこまでは分からない。ただこのままだとモンスターの群れは街に辿り着く危険があるので任務は準備が出来次第、すぐにでも行われる予定だ」
ビークポッドはピオンの質問に答えるとこれからの予定をサイ達に告げるのだった。
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