選ばれた理由

「ようやく来たか」


 アックア公国軍の基地に到着したサイ達を出迎えたのは、アックア公国の大公バルベルトの実妹でありアックア公国軍の元帥、そしてサイと同じゴーレムトルーパーの操縦士であるビアンカであった。


 まさか元帥程の人物が自分達を出迎えるとは思っていなかったサイ達は全員少なからず驚いていて、特にブリジッタとビークポッドの二人はビアンカの顔を見た瞬間に石のように硬直してしまっている。


「ビアンカさ……いえ、元帥。どうしてここに?」


 ブリジッタと婚約しているため為か、ビアンカを親戚の様に呼びかけたサイが慌てて言い直して質問すると、アックア公国軍の元帥は何でもないように答える。


「今回の合同任務はお前達のドランノーガだけでなく、アックア公国軍の砲兵隊と私のヴァイヴァーンも参加するからな。その為だ」


『『……!?』』


 サイ達とアックア公国軍の合同で任務を行うことは理解していたが、それにビアンカとそのゴーレムトルーパーであるヴァイヴァーンまで参加するとは知らなかったブリジッタとビークポッドは寝耳に水とばかりに目を見開き、その隣ではサイが二人とは別の意味で疑問を感じていた。


「あの、ビアンカ元帥? ヴァイヴァーンまで任務に参加するのだったら、何で砲兵隊まで参加するのですか?」


 サイの疑問はある意味もっともなものであった。


 この惑星イクスでモンスターに対抗できる戦力はゴーレムトルーパーだけで、それ以外の兵器や軍隊はゴーレムトルーパーが戦場に到着するまでモンスターの足止めをする程度の戦果しか期待できない。だからサイ達のドランノーガとビアンカのヴァイヴァーン、二機のゴーレムトルーパーが最初からモンスターの群れの討伐に出撃するのであれば、戦力として期待できない上に移動速度も遅い砲兵隊を任務に加える必要は無いように思えた。


 サイの隣で話を聞いていたビークポッドも、自分達砲兵隊が言われているにもかかわらず、怒ることなくむしろ同意するように頷いていた。しかしビアンカは意見はサイ達とは違うらしく、彼女は今回の合同任務に砲兵隊を参加させる理由をサイ達に説明する。


「サイ。この合同任務がお前達とドランノーガの存在をアックア公国に知らせるものなのは理解しているな? その為に砲兵隊には実際にドランノーガの戦いを見て他に知らせる宣伝役として任務に参加してもらう」


「元帥殿? 宣伝役のことは分かりましたが、それで何故我々砲兵隊なのでしょうか?」


 戦力ではなく宣伝役ならば自分達砲兵隊でなくとも他の兵科の軍人達でもいいはず。そういう意味を含めて説明を聞いたビークポッドが質問をすると、ビアンカは彼の質問を予測していたようで一つ頷いて答える。


「ドランノーガは言ってみれば空を飛ぶ巨大な砲台だ。だったらその性能を一番理解できるのは本職の砲兵科だろう。それに今回の任務の内容次第ではこれからの計画も変わってくるからな」


「これからの計画? それは一体何ですか?」


「それはまだ話せないな。まあ、お前達が関係している話だからすぐに分かるだろうさ。さあ、話は終わりだ。任務の準備に取り掛かるぞ」


 質問をするサイにビアンカは意味ありげな笑みを浮かべてそう言うと、彼女は今回の任務の準備をするべく彼らを連れて基地を奥へと進むのだった。

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