北の会議
上空から見て「X」の形に見える惑星イクスの大陸。その右上の角の部分は広大な草原地域で、そこはとある国家の支配下にあった。
広大な土地を支配しているという点ではソル帝国と同じだが、その国家は一つの王家が支配統治しているのではなく、前文明が滅びた日から今までこの土地に暮らしてきた全部で十九の部族が集まり同盟を結んだものである。
大陸の四分の一を占める草原地域を統べる国家の名前は「シェーヴィル同盟」。
そしてシェーヴィル同盟の唯一の都市、移動都市ザードヴェーチではシェーヴィル同盟に所属している十九の部族の族長達が会議をしていた。
「……では、この事は南方の国家にも報せて協力を求めるという事で良いな?」
十九人の族長達は円状のテーブルを囲んで会議をしており、族長の一人がテーブルの中央に置かれてあるものを見ながら他の族長達に話しかける。テーブルをの中央に置かれてあるのは小さな板状の機械で、それは現代の惑星イクスの技術ではとても造れないくらいの精巧さなのが見ただけで分かった。
「いや、私は反対だ。南方の国家はモンスターという人類共通の敵がいるにも関わらず、未だに人間同士で戦いあっている連中だ。そんな連中の手を借りてもかえって逆効果だと思うぞ」
別の族長が反対意見を口にするとまた別の族長が異論を口にする。
「人間同士の戦いなど、程度は小さいが我々もしているだろう? そしてこの件もまた、言ってみれば人間同士の戦いだ」
そしてこの言葉をきっかけに他の族長達も口を開き自分達の意見を言い出す。
「まだ戦いになるとは限らないのではないか? 『向こう』は交渉がしたいと言ってたのだぞ?」
「まともな交渉になると思うか? 向こうの話は儂も聞いたが明らかにこちらを下に見た話し方だった。そんな奴らが儂らの意見を聞くとは思えん」
「……少しいいかの?」
『『………!』』
話を聞く限り、族長達の半分は南方の国家に協力を申し込むのに賛成でもう半分は反対という感じであり、やがて唯一今まで何も言わなかった十九人の族長達の中で一番年配の族長が口を開いた。するとそれまで議論していた他の族長達は全員黙り、年配の族長の方を見た。
「南方の国家で特に力がある四つの国が同盟を組んだという話は聞いておるな? 今回の件は明らかに儂らだけでは荷が重すぎる。ここはやはり信用できるかどうかは別として、南方の国家にも協力を頼むべきだと思うが?」
『『……』』
まさに鶴の一声と言うべきか、年配の族長の言葉に他の族長達は反対とは言わず全員がテーブルの中央にある板状の機械に視線を向けた。
そしてその日のうちにシェーヴィル同盟は南方に位置する四つの国、すなわちフランメ王国とアックア公国、ソル帝国とアイゼン王国にそれぞれ使者を送るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます