帰省命令
「イーノ村に帰る……ですか?」
王都リードブルムの王宮に呼び出されたサイ達は、フランベルク三世から直接イーノ村へ帰省するようにと言われた。突然の故郷への帰省命令にサイが戸惑っているとそれにフランベルク三世が頷く。
「そうだ。君とクリスナーガ君とブリジッタ嬢の結婚が正式に決まったのだから、それをご両親に伝えるべきだろう? いい機会だから故郷でゆっくりしておくといい。最近の君達は『キマイラ』の仕事で多忙だったからね」
フランベルク三世の言葉はもっともである。婚約者達との結婚が正式に決まったのなら直接両親に伝えるべきだし、サイ達が「キマイラ」の任務で何度も他国へ移動していたのも事実であった。
「それはありがたいのですが……ここにいる全員で帰るのですか?」
そう言ってサイは周囲を見回す。今いるのはフランベルク三世の執務室で、そこにはサイとフランベルク三世の他に、ピオンを初めとする四人のホムンクルスの女性達、クリスナーガにブリジッタ、そしてサーシャにクリスライドも呼ばれていた。
「それはもちろん。サーシャ君とクリスライド君の事もご両親には伝えないとね。何しろクリスライド君はサーシャ君の婚約者候補となったのだから」
そう、クリスライドは将来ミスト王国の監督役になることを決めたことにより、サーシャの婚約者候補の一人、それもフランベルク三世の後押しもあって最有力候補となっていたのだ。
ちなみにサーシャの婚約者候補となったことを知らされたクリスライドが大喜びして、サイ達に微笑ましいものを見る目で見られたのは別の話である。
「あー……。改めて言われますとー、やっぱり照れますねー。クリスライド君はー?」
「え? あっ、はい。俺は照れるというか嬉しいと言いますか……」
フランベルク三世の言葉に照れたような表情となったサーシャがクリスライドに話しかけると、クリスライドは顔を赤くして俯き小声で返事をする。フランベルク三世はそんな二人の様子を様子を微笑ましそうに見ながら口を開く。
「仲がいいみたいで何よりだ。とにかく、君達だったらゴーレムトルーパーを使えばその日のうちにイーノ村につくだろう。……ああそうだ」
そこまで言ったところでフランベルク三世は、悪戯を思いついたような笑みを浮かべてサイ達を見る。
「サイ君。サーシャ君。イーノ村に帰ったら君達はきっと驚くだろう。楽しみにしておくといい」
「俺達が驚く、ですか?」
「それってー、どういうことですかー?」
疑問に思ったサイとサーシャが質問するが、フランベルク三世はその質問に答えようとせず、二人の兄妹は自分達の国王の言葉が真実であることを故郷に帰った時に知るのだった。
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