イーノ村であった出来事
「そーなんだー。じゃあお兄ちゃん達はアックア公国に行くんだー」
「ああ、そうなんだ」
フランベルク三世から新しい任務を受けたサイが屋敷に戻ってサーシャに任務を説明すると、彼女は羨ましそうな表情となった。
「いいなー。私もアックア公国に行きたかったなー」
サイの婚約パーティーならば彼の妹であるサーシャにも参加する資格はある。だが彼女は数日後にフランメ王国の士官学校に入学する予定であり、サイ達とアックア公国まで行くことは出来なかった。
「今回は無理でもまた行ける機会がありますよ。その時は私が案内してあげますからね」
「うん。ブリジッタさん、ありがとー」
同じ部屋で話を聞いていたブリジッタがそう言うと、サーシャは笑顔で礼を言ってから一つ気になったことをサイに聞いた。
「そう言えばお父さんとお母さんは呼ぶのー?」
「いや、実は陛下がすでに使者の人を送ってくれていたんだけど、二人とも話を聞いた途端気を失ったらしくて、とても行けそうにないらしい……」
サイがフランベルク三世から聞いた話を話すとサーシャは納得したように頷いた。
「ああー……。そういえばこの間イーノ村に帰った時もそうだったねー」
生鉄の樹の件でフランベルク三世とバルベルト、フランメ王国とアックア公国のトップが何の取り柄もない辺境の田舎村のイーノ村に訪れた時、サイの両親は驚きのあまり揃って気絶していた。そして驚いたのはサイの両親だけでなくイーノ村の村人達全員も同じで、イーノ村の村人達は両国の陛下を歓迎してお祭り騒ぎとなっていた。
「イーノ村に帰った時か……」
サーシャの言葉にサイもイーノ村に帰った時の事を思い出し複雑な表情を浮かべる。
イーノ村の村人達はフランベルク三世とバルベルト達を歓迎すると共に、今ではフランメ王国の英雄となった村の出世頭になったサイの帰還を祝ってくれた。それは嬉しいことだが、イーノ村の帰還は嬉しいことではなかった。
イーノ村に帰った時、サイはアイリーンの両親に彼女が罪を犯して今は牢獄にいることを伝えたのだ。アイリーンの両親は「娘の事は仕方がなかった。むしろ迷惑をかけてすまなかった」と言ってくれたのだが、やはり寂しそうな表情だったのを覚えている。
「お兄ちゃん? どしたのー?」
「いや、何でもない」
アイリーンの両親のことを思い出していたサイは、サーシャに声をかけられると首を横に振って答える。
「とにかく明日にはアックア公国から迎えが来て、二ヶ月は帰れないと思う。……すまないな」
「ううん。気にしないでー。どうせ私も士官学校に入学したら学校の寮に行くしー」
任務でアックア公国に行くと短くても二ヶ月は帰ってこれないことをサイが言うと、今度はサーシャが首を横に振って答えるのだった。
そしてその翌日……。
「久しぶりだな、サイ」
「お前、ビークポッド!? どうしてここに?」
サイはアックア公国で知り合った知り合いと再会するのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます