新しい任務

 ドランノーガとリードブルムの模擬戦から数日後。


 イーノ村周辺の土地はヴィヴィアンの予定通り、表向きはフランメ王国の王族とアックア公国の公族共有の別荘地という名目で正式に両国の共有管理地となった。もちろん王族と公族の別荘地なのだからそれなりの形にしなくてはならず、近いうちにイーノ村にはフランメ王国とアックア公国の両者から工事のための業者とそれを取り仕切る文官が派遣されることになり、これを知ったサイの両親は驚きのあまり気絶するのだがそれは別の物語。


 そしてフランメ王国の王都リードブルムへ帰還したサイ達は、同じく王都へ帰還したフランベルク三世に新しい任務の説明があると彼の執務室に呼び出されていた。


「アックア公国へ出向ですか?」


「そうだ。アックア公国に出向して向こうの軍隊と共同の任務を行い、パレードに参加する。それが君達の新しい任務だ」


『『…………………?』』


 フランベルク三世の言う任務の内容を聞いたサイは、自分と一緒に呼ばれたピオンを初めとする四人のホムンクルスの女性達、そしてクリスナーガにブリジッタと顔を見合わせる。


「あの、アックア公国の軍と共同の任務を行うのは理解できるのですが、パレードに参加するというのは?」


「この時期、アックア公国にはパレードをするような行事はなかったはずですけど……?」


「簡単なことだよ。サイ君、君はフランメ王国の王族とアックア公国の公族と婚約をして、そのパレードをこのフランメ王国で行った。それを今度はアックア公国でもやってもらおうというわけさ」


 サイが質問をしてブリジッタがそれに付け加えるとフランベルク三世はなんでもないような表情で説明をする。


「そしてアックア公国ではいまだにドランノーガの存在に懐疑的な者がいてね。向こうの軍隊と共同の任務を行えば、ドランノーガのいいアピールになるだろう」


 ドランノーガはアックア公国で黒竜盗賊団を撃退したことと、サイの婚約パーティーのパレードでアックア公国から来た来賓の前で姿を披露したことにより、今では少しずつだがアックア公国でもその名を知られつつある。しかしそれでもフランベルク三世が言ったようにドランノーガの存在に懐疑的な者は少なからずおり、彼らのほとんどはアックア公国がフランメ王国に肩入れしすぎることに異議を申し立てていた。


「これがうまくいけばフランメ王国とアックア公国の友好は更に強固なものになり、サイ君の両国での評価も上がるだろう。そう思わないかね、ヴィヴィアン君?」


「……ええ、そうですね」


 フランベルク三世はヴィヴィアンを名指しで呼んで話しかける。そしてフランメ王国とアックア公国との関係を強固にすることで自分の主人である青年の評価を上げようと、イーノ村を両国の共有管理地にするよう提案したヴィヴィアンはその質問に頷き、その隣ではサイの利益になるとピオンが満足そうな顔をしていた。


「分かりました。その任務、拝命しました」


 ヴィヴィアンとフランベルク三世のやり取りを見ていたサイは、今回の任務の意味を理解すると敬礼をして任務を引き受けたのだった。

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