クリスライド参加の理由
「マスター、大丈夫なのですか? クリスライドさんにグレドプテラを見せて?」
グレドプテラを見て固まっているクリスライドを前にピオンがサイに話しかける。
「大丈夫も何も仕方ないだろ? 陛下直々の命令なんだから」
ピオンに答えるサイだったが、そう言う彼も戸惑った表情を浮かべていた。
今回クリスライドを巡回任務に参加させたのも、「倉庫」の異能の異空間に収納していたグレドプテラを現実世界に戻したのも、全てはフランベルク三世の指示であった。
「それはそうなんですけど……。それにしても陛下も大胆なことを考えますわよね? クリスライドとグレドプテラを『キマイラ』を組み込むだなんて」
ピオンの言う通り、クリスライドを巡回任務に参加させてこうしてグレドプテラを見せたのは、彼とこのゴーレムトルーパーをサイ達「キマイラ」の一員にするためであった。
フランベルク三世の考えた通りにクリスライドがグレドプテラと共に「キマイラ」の一員になれば空の戦力が増えたことで戦術の幅は一気に広がるし、これからのミスト王国との交渉でも大きな発言権を得られるだろう。しかしそれでもピオンは……いや、サイ達はこの行動に不安を感じていた。
「ですがもしクリスライドさんがグレドプテラに乗って逃げ出したらどうするのでしょうか?」
ヴィヴィアンの疑問は最もなものであった。未だにグレドプテラとの突然の再会に呆然としているクリスライドが、愛機を取り戻したことで暗黒領域で戦った時の狂犬のような彼に戻れば、確実にこの王都リードブルムで大きな騒ぎが起こるだろう。
「……ローゼが『読心』の異能で調べた結果、逃げ出す可能性は低いし、今の彼には行くあてがない。それにもし、それでも逃げ出したとしても、その為に空を飛んで追跡できる俺達が同行しているんだろ?」
サイはローゼとドランノーガを順に見てヴィヴィアンの疑問に答えるが、それは彼女だけでなく他の三人のホムンクルスの女性達、そして自分に言い聞かせているように聞かれた。
「ねー? お兄ちゃん? あのゴーレムトルーパーってー、もしかしてクリスライド君の機体なのー?」
それまで黙っていたサーシャがグレドプテラを指差して聞いてくると、それまで彼女のことを忘れて機密に関わる話をしていたサイ達は気まずそうな顔となる。
「あ、ああ……。あれはクリスライド君のゴーレムトルーパー。グレドプテラと言ってドランノーガと同じように空を飛ぶことができるんだ」
「へぇー。そーなんだー」
サイの説明を聞いてサーシャはグレドプテラに興味を覚えてそちらを見る。そんな妹を横目にサイはクリスライドをどう説得しようかと考えるのであった。
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