ゴーレムトルーパーの未来

『『………』』


 ドランノーガの操縦室の中でサイとピオンは無言のまま自分達の操縦席に座っていた。二人は安心したような、しかしどこか納得できないという表情をうかべており、それはここにはいない自分達の操縦室にいるヴィヴィアン、ヒルデ、ローゼの三人も同様であろう。


 現在ドランノーガは空を飛んでおり、その前には二つの大きな影が見えた。その二つの影はサーシャが乗るドラトーラと、クリスライドが乗るグレドプテラであった。


 グレドプテラは下半身の竜の脚を使ってドラトーラの機体を掴んで牽引しながら空を飛んでいて、二機のゴーレムトルーパーからはそれぞれの操縦士の会話が聞こえてきた。


『おー、速いねー。凄いじゃーん。クリスライドくんのグレドプテラってー』


『は、はい。お役に立てて嬉しいです』


 本来飛行能力が無いドラトーラが空にいるのはサーシャの「浮遊」の異能によるものだが、それだけでは他の二機のゴーレムトルーパー程速度が出ないのでグレドプテラに牽引されていた。その事をサーシャが褒めるとクリスライドが嬉しそうにしているのが声だけで分かった。


「なんか……どうやってクリスライド君を説得しようか悩んでいた自分が馬鹿みたいだ……」


「お疲れ様です。マスター」


 前方を飛ぶドラトーラとグレドプテラを見ながら疲れたように言うサイに、ピオンが同情するような声をかける。


 今から少し前、王宮の格納庫でサイはどうやってクリスライドに話しかけようか悩んでいた。なにしろクリスライドはカーラの嘘によりグレドプテラがもう二度と帰ってこないと思い込んでいて、あの大人しい態度もそれが少なからず関係していたからだ。


 だからどうやってクリスライドを刺激させずにグレドプテラに乗せ、巡回任務に参加させようかサイが考えていた時、サーシャが先にクリスライドに話しかけたのだ。詳しい事情を知らないサーシャは単に自分と同年代のゴーレムトルーパーの操縦が増えたことを喜び、クリスライドに一緒頑張ろうと言うと彼は呆然としていた状態からあっさりと元気を取り戻して巡回任務に参加したのであった。


 それを見ていたサイが色々考えていたのが馬鹿らしいと思うのも無理はないだろう。


「それにしても空を飛ぶゴーレムトルーパーが三機か……。少し前までは考えられない光景だな」


 何か話題を変えようと考えたサイは前方を飛ぶドラトーラとグレドプテラ、そして自分達が今乗っているドランノーガのことを思って呟いた。現代ではゴーレムトルーパーは地上を高速で駆ける兵器であるというのが常識で、空を飛ぶドランノーガを初めとする三機の姿は、そんな常識を吹き飛ばすような光景だろう。


「確か現存している生鉄の樹はどれも稼動状態が悪く、新しいゴーレムオーブが完成まで何十年もかかると聞きました。ですが新しいゴーレムオーブが完成すれば、ドランノーガみたいな空を飛べるゴーレムトルーパーももっと増えるかもしれませんよ」


「ゴーレムトルーパーが地上だけでなく空でも高速で動き回って戦う未来か……。見てみたいような見たくないような」


 サイはピオンが話すゴーレムトルーパーの未来を想像してそう呟くのであった。

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