突然の報せ

 二回目のサイとアックア公国軍との合同任務は、途中で正体不明の亀のモンスターが現れるという予想外の出来事があったが、当初の予定である猪に似たモンスターの群れの殲滅は成功した。


 そして二回目の合同任務からサイ達がアックア公国の首都に帰還してから半月後、首都であるパレードが開催された。それはアックア公国の大公の娘であるブリジッタとフランメ王国の軍人であるサイの婚約と、アックア公国とフランメ王国との関係をより強固なものにすることを、改めて発表する為のものである。


 事情をよく知らない大半のアックア公国の国民達からは、ブリジッタの婚約とフランメ王国との同盟の強化に疑問の声が出た。


 しかしパレードでドランノーガが空から登場して、サイがそれの操縦士であることを公表すると、それまで疑問の声を上げていたアックア公国の国民達は意見を一変させる。惑星イクスで最強の兵器であるゴーレムトルーパーの操縦士であるならば、つい最近まで男爵であった成り上がりの伯爵でも公女の婚約者に足りて、新たなゴーレムトルーパーを手に入れた国とは同盟の強化をする価値があると、誰から見ても明らかだからだ。


 そうしてアックア公国で行われたサイとブリジッタ、クリスナーガの二度目の婚約パーティーは、参加者の全員に祝福されて成功したのである。




「とりあえずおめでとうと言っておこうか、サイ」


 婚約パーティーが終了した後、控え室で礼服を着たビークポッドが、先程までパーティーの主役の一人であったサイに祝いの言葉を送る。しかしビークポッドは腕を組んで不機嫌そうな表情をしており、とても祝っているようには見えなかった。


「とりあえずありがとうと言っておこうか、ビークポッド? でも何でそんなに不機嫌そうなんだよ?」


「決まっているだろうが。ピオンさん達のような四人の巨乳美女に囲まれている上に、ブリジッタ様とクリスナーガ様という二人の巨乳美女と婚約したのが妬ましいからだ」


「そうか。じゃあ仕方がないな」


 サイの質問に対して自分の妬みの感情を隠すことなく告白するビークポッド、ではなく巨乳好きな馬鹿二号。するとサイ、ではなく巨乳好きな馬鹿一号は怒ることなくむしろ納得して頷く。


 そんな巨乳好きな馬鹿一号サイ馬鹿二号ビークポッドの会話に僅かに呆れた表情となったピオンが口を開く。


「二人は相変わらずですね。……それにしても今回の婚約パーティー、フランメ王国の方が見かけませんでしたが?」


 ピオンは今回の婚約パーティーの参加者達の顔ぶれを思い出しながら呟く。婚約パーティーにはフランメ王国の貴族や軍人も何人か参加していたはずだったのだが、実際に始まってみると会場で彼らを見かけることはなかった。


「そういえばそうね。何かあったのかな?」


「ああ、パーティーの直前にフランメ王国から緊急の要件が入ってきた。フランメ王国の奴らはそれに対応していたのさ」


 ピオンの疑問にクリスナーガも頷いて言うと、丁度その時ビアンカがサイ達のいる控え室に入ってきて告げた。そして続けて彼女が言う言葉の内容は、サイ達を驚かせるのに充分な内容であった。


「お前達には婚約パーティーに集中してもらいたくて今まで話さなかった。何でもフランメ王国の国境に現れたモンスターの群れを、サーシャがドラトーラに乗って滅ぼしたらしい。士官学校の学生達も大勢その様子を目撃したそうだ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る