主砲発射
サイはドランノーガの武装を使うためにピオンが選んだ地点の一つに降り立った。そこは彼女が不意討ちで吹き飛ばした大蛇に乗った騎士のゴーレムトルーパーの近くであった。
ドランノーガを着陸させたサイは操縦席の中からモンスターの大群を見る。視線の先ではモンスターの大群は自主繁殖を繰り返して数を増やしながら街へと向かっていた。
あの大群を構成しているモンスターは、その一匹一匹が人間を初めとする多くの命を食い荒らし、時が経てば爆発的に数を増やして国をも飲み込む災害である。だが今のサイは、そのモンスターの姿を見ても恐怖を感じていなかった。
何故ならば今サイがいるのは惑星イクス最強の兵器ゴーレムトルーパーのドランノーガの中で、更に隣には自分の補佐をしてくれる博識で美人なホムンクルスの少女ピオンがいて、それらの事実が彼に恐怖に打ち勝つ強い自信を与えてくれていた。それでも恐怖を感じることがあるとするならば、それはこれからする攻撃でモンスターの大群を討ち漏らし、街やイーノ村を危険にさらすかもしれないという不安ぐらいだろう。
しかし当然サイはそのような失敗をするつもりなど毛頭もなく、大きく深呼吸をして気持ちを落ち着けるとドランノーガに命令を出した。
「ドランノーガ。【カロル・マーグヌム・コルヌ】発射準備」
『………!』
「了解しました。発射準備開始します」
サイの命令を受けてドランノーガが武装の発射準備を開始し、専用オペレーターであるピオンがそれの補助をする。
「両脚部、アンカー始動、足場を固定。両腕部、地面に接地、現体勢を維持」
『………!』
ピオンが言うとドランノーガがその言葉に従ったように動き出し、脚部を大きく開いて腰を下ろすと脚部に内蔵された杭を勢いよく地面に突き刺して、同時に前腕部を地面につけて今の体勢を維持する。
「テールブースター、後部への垂直状態と噴出口の待機状態を維持。ジェネレーター、最大出力へ移行」
次にドランノーガが尻尾を後ろに向けて垂直に伸ばすと、尻尾の噴出口がいつでも火を吹けるように小さな光を灯し、続けて内部のジェネレーターが獣の唸り声のような音を立てて駆動して装甲と装甲の合間から緑色の光が漏れ出た。
「全エネルギー、頭部の主砲へ集中。照準補正、開始」
ジェネレーターから生み出された膨大なエネルギーがドランノーガの額にある角、主砲に集まり砲口から強い光が灯る。その時、街へと向かっていたモンスターの大群は、本能で異変を感知して動きを止めて、異変の元であると思われる光……ドランノーガの方へと視線を向ける。
前方を映し出す壁に大きな円が浮かび上がってこちらを見ているモンスターの大群を囲む。それを確認したピオンがサイに告げた。
「マスター。発射準備、全て整いました。いつでもいけます」
「……」
ピオンに発射準備が完了したと告げられたサイは僅かに気後れした表情を見せ見せたが、すぐに気を引き締めると、ドランノーガの武装を放つ引鉄となる言葉を言い放った。
「【カロル・マーグヌム・コルヌ】発射!」
『………!』
サイの言葉と共に、ドランノーガの頭部にある主砲から光が放たれた。
視界が白く染まり、続いて衝撃が襲い掛かってきて、最後に轟音が響き渡った。
主砲を放った反動の衝撃を凄まじく、ドランノーガは地面に杭を突き刺して固定した脚部で踏ん張り、尻尾の噴出口から炎を噴き出して何とか吹き飛ばされないように抵抗する。
「うおぉ!?」
「……!」
ドランノーガの操縦席にいるサイとピオンにも主砲の反動の衝撃が伝わり、二人は思わず目を瞑ってそれに耐える。そしてやがて衝撃の振動が収まりサイが目を開くと、目の前の光景に目を見開いた。
「………あ、あれ? モンスターは?」
思わず呆けた声を出すサイの前方には何もなかった。つい先程までいた何百何千というモンスターの大群は一匹残らず影も形もなく無くなっていた。
今サイの目の前に広がるのは何百何千というモンスターの大群ではなく、所々で火が燃えている見渡す限りの黒く焼き焦げた焼け野原であった。
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