初めての宮殿
フランメ王国王都リードブルムにある国王の宮殿の前に六人の男女が立っていた。
アックア公国の士官学校を卒業して帰国して来たサイと、彼に仕えるピオンとヴィヴィアン、ヒルデとローゼの四人のホムンクルス。そしてサイと婚約をして一緒について来たアックア公国の公女のブリジッタである。
「ここが国王の宮殿か……。立派だな」
サイが宮殿を見上げて感嘆の声を上げるとそれを聞いたピオンが首を傾げる。
「マスターはここに来るのは初めてなんですか? 王都にある軍学校に通っていたのに?」
「仕方がないだろ。確かに軍学校時代は王都に住んでいたけど、貧乏男爵家の嫡男なんて宮殿に呼ばれるはずないし遠目から見るだけだったよ」
言われてピオン達は納得する。確かに軍学校時代のサイは名ばかりの男爵家に生まれた辺境の村の村人で、国王がいる宮殿に呼ばれるような存在ではなかった。
しかし今は違う。ゴーレムトルーパーを二機保有しているサイは大げさでもなんでもなく国の未来を左右する重要な存在で、今日宮殿に来たのもフランメ王国国王フランベルク三世からの直々の呼び出しによるものであった。
そしてそんな話をしていると宮殿から数人の侍女達が現れてサイ達六人を出迎えた。
「皆さん、ようこそおいでくださいました。お待ちしておりました」
侍女達の一人、眼鏡をかけたサイより少し年上の侍女がそう言って深々とお辞儀をすると、他の侍女達も同じようにサイ達に向けてお辞儀をする。
「あ、はい。これはどうもご丁寧に」
お辞儀をする侍女達を見てサイも思わず頭を下げるのだが、頭を下げたのは彼一人だけであった。ピオン達四人のホムンクルスは主人以外の相手に下げる頭はないといった感じで、ブリジッタは今のような対応に慣れているといった感じで侍女達を見ていた。
……何と言うか、主人公とヒロイン達の器の違いが悲しくなるくらいよく分かる絵であった。
眼鏡をかけた侍女はサイ達を一瞬値踏みするような目で見た後、すぐに来客を迎える表情となって彼らに声をかけた。
「皆さん。どうぞこちらへ。来客用のお部屋へとご案内します」
そう言って侍女達は宮殿の中を進み、サイ達もその後に続いていく。しかしその中でサイだけはどこか落ち着かない様子で、宮殿の通路を歩きながら小声でブリジッタに話しかけた。
「な、なぁ……? 今更だけど俺達の格好、大丈夫なのかな? どこか変だったりしないかな?」
ちなみに今のサイとピオン達四人のホムンクルスの女性は、士官学校卒業にフランベルク三世に送られた礼服を、ブリジッタは実家より持ち出したドレスを着ていた。
「ふふっ。大丈夫ですよ。どこも変なところはないですから。……ただちょっと礼服に着慣れていない所がありますけど、それもすぐに慣れますよ。さぁ、行きましょう」
「あ、ああ。そうだな」
微笑みを浮かべるブリジッタに励まされたサイは気を取り直して宮殿の通路を進み、侍女達に来客用の部屋へと案内されるのであった。
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