地上だけの兵器

「そういえば……。宇宙の奴らは一体どれだけの軍事力を持っているのだ?」


「軍事力……ですか?」


 ビークボッドに質問されたランが聞き返すと、彼はそれに小さく頷いた。


「そうだ。宇宙の技術力が優れているのは分かったが、肝心の軍事力はどうなのだ? シェーヴィル同盟が要求を断って領地を譲らないと言ったら、宇宙の奴らは実力行使に出てくると思うか?」


「……分かりません。私は市民階級の出身でしたし、まともに軍事教習を受けたのは帰還作戦に志願してからの十ヶ月くらいですから……」


 ビークボッドの質問にランは申し訳なさそうに首を横に振った。その言葉にビークボッドは僅かに残念そうな表情となるが、更に彼女に質問をする。


「軍事教習を受けたということは、少しは宇宙の武器や兵器を見てきたのだろう? やはりこちらの兵器より高性能だったか?」


「………はい。武器や兵器は宇宙の方がずっと高性能です。だけどゴーレムトルーパーより強力な兵器はなかったと思いますから、軍事力の差はそれ程大きくないかもしれません」


「何?」


 ランが少し考えてからビークボッドの質問に答えると、二人の会話を聞いていたサイが一つの疑問を感じた。


「ちょっと待ってくれ。今のはどういう意味だ? その言い方だと宇宙にはゴーレムトルーパーがないみたいじゃないか?」


「ええ、そうです。宇宙にはゴーレムトルーパーはありませんけど……これって言っていませんでしたっけ?」


『『……………!?』』


 ランの言葉にその場にいた全員が初耳だとばかりに目を見開いて驚き、やがてピオンが納得したように呟く。


「なるほど……。言われてみればそうですよね」


「なるほどって、ピオンは宇宙にゴーレムトルーパーがない理由を知っているの?」


 ピオンの呟きを聞いてマリーが彼女に聞くと、赤紫色の髪のホムンクルスはこの場にいる全員に聞こえるように説明をする。


「本来宇宙は生物が生きていける場所ではないのです。物の重さがなく、まともに立って歩けない。空気がなく、息をすることができない。それ以外にも生物が生きるのに必要なもの全てがないのが宇宙なのです」


『『………………?』』


 ピオンの話は宇宙から来たランからすれば常識なのだが、惑星イクスで生まれ育って宇宙に関する知識が最低限しかないサイ達にはあまり実感が沸かず、クリスナーガが疑問を口にする。


「よく分からないけど、それが宇宙にゴーレムトルーパーがない事と関係があるの?」


「あります」


 ピオンはクリスナーガの疑問に即答すると説明を続ける。


「ランさんがいた場所、宇宙にある居住地は大勢の人達が生きていける環境を維持するために莫大なエネルギーを必要としています。そしてゴーレムトルーパーの元であるゴーレムオーブも、製造に莫大なエネルギーが必要です。つまり宇宙の人々は他の兵器はともかく、ゴーレムトルーパーを製造するだけの余裕がないと私は思います」


「なるほど」


 ピオンの説明にランは納得して頷き、サイ達も完全にではないがピオンの言葉を理解した。


「ゴーレムトルーパーは惑星イクスだけにある兵器、ですか……。興味深い話ですね」


 好奇心を刺激されたブリジッタが瞳を輝かせて言うと、それを見たマリーが呆れた顔で言う。


「ブリジッタさん……。気持ちは分かるけど少し抑えてくれない? とにかく宇宙の兵器……今の話を聞いたら気になるわね」


「ああ。確か三日後だっけ? 宇宙の奴らが来るの? その時に奴らの兵器を見れればいいんだけどな」


 マリーの言葉にジェラードが同意する。


 シェーヴィル同盟の長老達との会談の時にサイ達は、三日後に宇宙からの使者が来ることを聞かされており、その時に使者を出迎える場に是非同席してほしいと長老達から言われていたのだった。

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