空から降りてくる船
サイ達がシェーヴィル同盟へとやって来てから三日後。彼らはシェーヴィル同盟が統治している草原にいた。
この草原にサイ達がいるのは、今日ここで行われるシェーヴィル同盟と宇宙の人々との交渉に立ち会ってほしいと、シェーヴィル同盟の長老達に頼まれたからであった。彼らから少し離れた場所では、交渉に参加するシェーヴィル同盟の文官らしき男達数名と、その護衛と思われる十数人の軍人達が緊張した顔で空を見上げている。
「しかしシェーヴィル同盟の奴ら……。このタイミングで宇宙の奴らと交渉をするってことは、最初から俺達を強引に巻き込むつもりだったのか?」
「いえ、それは少し違うと思うわ」
シェーヴィル同盟の文官と軍人達を見てジェラードが呟くと、それを聞いたマリーが彼に話しかける。
「私達は少人数の上にサイの異能のお陰で通常の部隊に比べて移動速度がずっと速い。だからシェーヴィル同盟の予想より早くここに到着した。多分シェーヴィル同盟は今回の交渉は自分達だけでしようとしていたんじゃないかしら?」
マリーがサイの方を見てから自分の考えを口にすると、サイは納得した表情で口を開く。
「こちらとしても実際に交渉に立ち合えるのは報告がしやすくて助かるな。……それにしてもシェーヴィル同盟の人達、怯えすぎじゃないのか?」
呆れたように言うサイの言葉通り、今も空を見上げているシェーヴィル同盟の文官と軍人達の表情は、緊張しているのを通り越して怯えているようでビークポッドが顎に手を当ててサイの言葉に返事をする。
「まあ、それは仕方がないのではないか? 何しろランを知っている俺達とは違い、シェーヴィル同盟は実際に宇宙の人間と会うのはこれが初めてなのだから。もしかしたら彼らは宇宙の人達のことを人間ではなく怪物の類いと想像しているかもな」
「ま、まさかそんな……」
ビークポッドが最後に言った冗談にランが表情を強張らせる。彼女は彼の言葉が冗談だと分かっているのだが、シェーヴィル同盟の人達の表情を見るととても冗談とは思えず、宇宙出身の自分も怪物の類いと思われるのは心外であったからだ。
「とにかく、実際に宇宙出身のランを知っていて、ピオンから前文明のことを聞いている俺達は宇宙の奴らが来ても驚くことは……」
『『……………!?』』
ランの表情を見てジェラードが話を変えようとそこまで言ったその時、空を見上げていたシェーヴィル同盟の文官と軍人達がざわめきだした。何事かとサイ達も空を見上げると、そこには巨大な船がゆっくりと地面にと降りてきていた。
砦程の大きさの、船体のいたる所に大小の大砲が無数に備え付けられている鋼鉄で作られた巨大な船。それがまるで紙風船のようにゆっくりと降りてくる光景は、シェーヴィル同盟の者達だけでなく、空を飛ぶゴーレムトルーパーをよく知るサイ達をも圧倒した。
「ぜ、前言撤回、驚きました……!」
「成る程。確かに宇宙の人々の技術力は圧倒的なようですね。……しかしあの人達は大丈夫なのでしょうか?」
空から降りてくる巨大な船は、まず間違いなく宇宙の人々の乗り物だろう。ジェラードは空の船を見上げながら驚愕の表情でそう呟き、その呟きを聞きながらピオンはシェーヴィル同盟の者達の方へと視線を向けた。
『『………!』』
宇宙の人々が乗っていると思われる空から降りてくる船の姿に、シェーヴィル同盟の者達は腰を抜かさんばかりに……いや、すでに腰を抜かしている者が数名いた。相手が姿を見せたこの時点で、シェーヴィル同盟の者達が戦意を完全に挫かれたのは明白であり、ピオンだけでなくこの場にいる全員がこれからの交渉に対して不安を覚えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます