模擬戦が終わっての会話

「今日は本当に疲れたな……」


 模擬戦が終わった日の夜。サイは拠点として使っている砦の一室で椅子に座った状態で呟く。


 その部屋にはサイだけでなく、ピオンを初めとする彼に従う四人のホムンクルスの女性達、ブリジッタにカーラ、そしてジェラードにマリーと、今回の模擬戦に参加したゴーレムトルーパーの操縦士達が集まっていた。


「ああ、確かに疲れたな……」


 サイの呟きにジェラードが頷いて同意する。


「今回の模擬戦、何とか勝つことはできたが流石はソル帝国が誇るゴーレムトルーパー部隊『大いなる光』って感じだったな」


 そう言ってジェラードは今日の模擬戦の事を思い出す。


 マリーの作戦により地の利を得ることができてソル帝国側のゴーレムトルーパーと有利に戦うことはできたが、向こうは最後に不利な地形にも対応を見せて、その辺りは歴戦の操縦士と言わざるを得なかった。


「次に同じ作戦でいっても多分通用しないだろうな」


「我が国の操縦士達を理解してくれて嬉しいわ」


 合同部隊の一員としてソル帝国側のゴーレムトルーパーを倒す作戦を考えたものの、ほんの少し前まで彼らと同僚であったマリーは、複雑ではあるがそれでま誇らしげな表情でジェラードの言葉に返事をした。


「それにしても始めての戦いなのにあそこまで戦えたブリジッタとカーラも凄かったな。二人ともお疲れ様」


「は、はい! ありがとうございます」


「ありがとう、ございます」


 サイに言われて今回の模擬戦が初戦闘であったブリジッタはやや興奮気味に答え、ピオン達とは違って感情の起伏が少ない通常のホムンクルスのカーラも、どこか嬉しそうに答える。


「それでこれから私達はどうするのでしょうか?」


「私達合同部隊の存在を民衆に知らせるためのパレードをするってミッシェルさんから聞いたわ」


 ピオンの疑問にミッシェルから今後の予定を少しだけ聞いていたマリーが答える。


「この合同部隊は今まで例を見ないものだから、恐らくソル帝国の後はフランメ王国とアイゼン王国でも同じようなパレードをするでしょうね。要するに私達の存在を民衆に知ってもらうのが当面の任務でしょうね」


「パレード、ね……」


 マリーがこれからの事を予想すると、パレードの主役となって大勢の民衆に見られることに慣れていないサイが曖昧な表情となる。


「でもパレードって言っても、明日すぐに行われるわけではないんでしょう? だったらマスター、それまで一緒にソル帝国を見て回りません? デートですよ、デート」


「ああ、そうだな」


 そう言うとピオンはサイの右腕に抱きつき笑顔を浮かべ、それに対してサイは苦笑を浮かべて答える。


 しかしピオンの要望は叶うことはなかった。

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