護衛を兼ねた帰還命令
「フランメ王国に帰れるわよ」
サイ達「キマイラ」がクリスライド達を暗殺に来たミスト王国の軍人達を捕らえてから三日後。アイゼン王国の王城から伝言を伝えに来たクリスナーガは、開口一番にサイ達にそう言った。
「そうなのか? アイゼン王国で俺達『キマイラ』の凱旋パレードでもするかと思ったが?」
クリスナーガの言葉を聞いてサイが首を傾げて口を開く。
最近は暗黒領域のモンスターの活性化やグレドプテラに関する問題があったので忘れがちになっていたが、「キマイラ」と当初フランメ王国とアックア公国とソル帝国、アイゼン王国の同盟を宣伝する意味を兼ねて各国でお披露目をする予定であった。しかし突然いくつもの問題が起きたせいで、何処の国でもお披露目をすることが出来ずにいた。
そしてそんな問題もようやく解決したので、アイゼン王国でお披露目をするのかとサイは思っていたのだが、クリスナーガは首を横に振って否定する。
「そんなの延期に決まっているでしょう? 確かにグレドプテラの問題は一応は片付いたけど、その後処理がまだなんだから。今回の件でミスト王国にどのような請求をするか四ヶ国で決める以前に、その為の会議の準備も必要。だから『キマイラ』の隊員は一時それぞれの国へ帰還することが決まったの」
「では次に集まるのはその会議の時ということですか?」
クリスナーガの説明を聞いてピオンが質問をすると、クリスナーガはそれに頷いてみせた。
「そういうこと。その時は会議に参加する人達の護衛を兼ねてってことね」
「……そうか。皆と離れるのは少し寂しいけど久しぶりの故郷だ。良い機会だからゆっくりさせてもらおうか」
生まれ育った故郷は違うが、それでも行動を共にした「キマイラ」の隊員達の事を思い浮かべながらサイが言うと、途端にクリスナーガが表情を苦いものとする。
「あー……。その事なんだけど……他の人達はともかく、私達はゆっくり出来ないんじゃないかな……?」
『『え……?』』
躊躇いながら言うクリスナーガの言葉に、サイを含めたその場にいる全員が彼女の方を見た。
「クリスナーガさん? それってどういうことですか?」
ブリジッタが質問をすると、クリスナーガはため息を一つ吐いてから答える。
「はぁ……。これは私も今日いきなり言われたんだけどね? 私達にある人達をフランメ王国に連れていってほしいんだって。つまりこの帰還は私達だけ護衛任務を兼ねているってこと」
「護衛任務はともかく、ある人達って誰なんだ?」
いつもと様子が違うクリスナーガに次はサイが質問をすると、彼女はひきつった笑みを浮かべてみせた。
「……サイ達も知っている人達よ。きっとあったら驚くと思うわ」
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