クリスライドの興味

 アイゼン王国からフランメ王国までの道中、クリスライドは恨みがましい目でサイ達を見つめる以外は特に暴れたりすることなく大人しいものであった。そんな彼の態度にピオンが不機嫌となり、何度か衝突しそうにはなったがサイ達は特に大きな問題もなくフランメ王国へと帰還するのだった。


「さあ、着いたぞ。ここが俺達の屋敷だ」


 フランメ王国の王都リードブルムにある自分の屋敷の前でサイは、クリスライドと彼の部下達に話しかける。何故クリスライド達がここにいるかというと、彼らを屋敷に止めるようにとフランベルク三世から直々に命令があったからだ。


「全く……。どうしてこの人達を私達の屋敷に……」


 クリスライド達を自分達の屋敷に住まわせることに不満を感じているピオンが呟くと、サイが苦笑を浮かべて話しかける。


「説明されただろ? クリスライド達は亡命を希望して来たから囚人のように牢屋に入れるわけにはいかないけど、万が一の為にまだ見張りをするべきだって。そしてそれが出来るのが俺達しかいないんだから仕方ないじゃないか?」


「……分かっていますよ。言ってみただけです」


 サイがフランベルク三世から言われた言葉をピオンに言うと、その時同じ場所にいた彼女は仕方なさそうに頷いてからクリスライド達の方を見る。


「皆さんには私達とこの屋敷で一緒に暮してもらいますが、くれぐれも変な気を起こさないように。何かしようとしてもすぐに分かりますし、その時は容赦はしませんよ?」


『『は、はい!』』


(ピオンの奴……。一体彼らに何をしたんだ?)


 ピオンが軽く睨んでそう言うとクロエやラッセルといった、ピオンが捕まえた四人が姿勢を正して同時に返事をした。その様子を見てサイは内心で首を傾げるのであった。


「とにかく早く屋敷に入ろう。長い間、留守にしていたから掃除もしないといけないし、買い物もしないといけないからな」


「……何でお前がそんな事をするんだ?」


 サイがピオン達に声をかけると、今まで無気力であったクリスライドが僅かに興味を持ったようで彼に話しかけてきた。


「何で、とは?」


「お前はゴーレムトルーパーの操縦士で、それだったら爵位も階級も上の方なんだろ? だったら使用人とかも雇っているんじゃないのか?」


 最初はクリスライドの言葉の意味が分からなかったサイだが、続けてきいた言葉で彼の聞きたいことを理解して納得したように頷く。


「ああ、そういうことか。俺がドランノーガを手に入れて今の地域に就いたのは結構最近のことなんだ。それまでは貴族とは名ばかりの平民同然の辺境男爵家で、この地位になっても色々と忙しくて使用人とかは雇っていないんだ」


「……!? そうなの?」


 サイの言葉にクリスライドは思わず目を見開いた。どうやら今のサイの言葉は彼にとってとても意外なものであったらしい。

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