モンスターの反撃

「えっ!? 何、何ー?」


 突然の兵士達の歓声に驚いたサーシャは、兵士達が退却の足を止めてこちらを見ているのに気づき、呆れたような困ったような表情を浮かべる。


「あの人達ー、何をしているのかなー? 早く逃げてほしいんだけどなー……って!?」


 そこまで言ったところでサーシャはある違和感に気づき、慌てて視線を前に戻す。そこには自分の先制攻撃で吹き飛ばされ、地面に倒れている蜥蜴のモンスターしかおらず、他の蜥蜴のモンスター二体の姿はどこにもなかった。


「あと二体のモンスター、どこにいるのー?」


 周囲を見回すサーシャだったが、それでも姿を確認できるのは今地面に倒れている蜥蜴のモンスターだけ。


 確かにサーシャは三体の蜥蜴のモンスターから歓声を上げる兵士達に視線を移したが、それでも蜥蜴のモンスター達から目を離した時間はほんの数秒。その数秒の間に、こちらの目が届かない場所まで逃げたとはとても思えなかった。


 そしてサーシャが周囲を見回していると、地面に倒れていた蜥蜴のモンスターがふらつきながらも立ち上がり、それを見た彼女は思わず舌打ちをする。


「っ! しょうがないかー。まずはアイツを確実、に……!?」


 サーシャはどこにいるのか分からない二体の蜥蜴のモンスターは後回しにして、先に目の前にいる蜥蜴のモンスターを倒すことに決めてドラトーラを操作しようとした。しかしその時、突然ドラトーラに何かがぶつかり、機体の動きが止まってしまう。


「今度は何ー? ……えっ?」


『『……………!?』』


 再びサーシャが周囲を見回すと、何も無かったはずの空間からドラトーラの機体にしがみつく二体の蜥蜴のモンスターの姿が現れ、これには彼女だけでなく戦いを見ていた砦の兵士達も驚きで目を見開いた。


「と、透明ー? いや、保護色ー? そんなのアリー?」


 つまり二体の蜥蜴のモンスターが砦の兵士達に気づかれず砦に近付いてこれたのも、先程サーシャが見失ったのも、今の保護色で周囲の風景に同化していたからである。これは最早「透明化」と言っても過言ではなかった。


 保護色を使い相手に気づかれることなく近づき、あるいは離れていき、何かを食べる毎に脱皮をして巨大化をする蜥蜴のモンスター。しかもそれが三体。


 もしこんなモンスターをここで倒さず一体でも野放しにすれば、どれだけの人間の街が被害を受けるのか想像もつかない。砦の兵士達は蜥蜴のモンスターの脅威を改めて理解すると全員が顔を青くした。


 そして蜥蜴のモンスターの脅威を理解したのはサーシャも同様であったが、ドラトーラの操縦室の中で彼女は恐怖の表情ではなく、逆に笑みを浮かべていた。


「ふ~ん? 予想以上に厄介なモンスターみたいだねー。だったらこの状況はー、とってもラッキーみたいだねー。……ドラトーラ!」


『………!』


 この蜥蜴のモンスターは三体ともここで確実に倒さなければならない。更に言えば今がその「絶好の機会」であると理解したサーシャは、自らが作り出した乗機の名前を大声で呼ぶ。


 すると次の瞬間、ドラトーラの機体が光に包まれた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る