ゴーレムトルーパーが作られた理由
ピオンの発言にその場にいる全員の視線が彼女に集中する。
「ピオン、それはどういうことだ?」
「そ、そうですよ! どうして宇宙の戦力だとモンスターを倒すことができないんですか?」
サイとランが疑問を口にするとピオンは、一度この場にいる全員の顔を見て二人と同じ疑問を感じていることを確認すると口を開いた。
「では逆にお聞きします。前文明は現在の地上より遥かに高く、宇宙の方々に負けないくらいの技術力を持っていました。実際、前文明時代の惑星イクスには、ドランノーガやグレドプテラのように人を乗せて高速で空を飛ぶ兵器や、たった一つで小さな島なら跡形もなく吹き飛ばす爆弾のような武器も多くあったそうです。……何故それだけの兵器を保有する前文明が、ゴーレムトルーパーを開発したと思いますか?」
「それは……モンスターと戦うためでは?」
ピオンからの質問に前文明の研究の専門家であるブリジッタが答えると、ピオンはそれに一つ頷いてからブリジッタの方を見る。
「はい。ゴーレムトルーパーはモンスターと戦うために開発された兵器です。ですが何故、前文明の人類はゴーレムトルーパーを開発しようと思ったのでしょう? ただモンスターと戦うだけならすでにある兵器を使えばいいだけです。もちろん戦いを早く終わらせるために、より多くの敵を倒せる兵器を開発するのは当然ですけど……少し変だとは思いませんか?」
『『……………』』
「……?」
サイとクリスナーガとブリジッタ、ジェラードにマリーはピオンの言葉を聞いて前文明の行動に「違和感」を感じたが、それが何なのか分からず黙ってしまう。ちなみにランは話に全くついていけず頭に疑問符を浮かべていた。
「え、ええと、その……? それってつまりどういうことなんですか?」
考えるのが限界になったランが聞き、サイ達もピオンに視線を向けるとピオンは「答え」を口にする。
「つまり割りに合わないのですよ。ゴーレムトルーパー、そしてゴーレムトルーパーの元であるゴーレムオーブの製造プラントである生鉄の樹。これらを作るのは前文明の技術力でも容易いことではありません。ですけど前文明時代にはもっと簡単に大量製造できて効率の良い兵器がたくさんありました」
「……! つまりそこまでしてもゴーレムトルーパーでモンスターと戦う必要があったってことか」
そこまで聞いてようやくピオンの言いたいことが分かったサイが呟くと、ピオンが大きく頷く。
「はい。その通りです、マスター。前文明の人類がゴーレムトルーパーを開発した理由、それはゴーレムトルーパーでしかモンスターを『完全に』殺せないからです。モンスターは体の大部分を失っても体の一部分、細胞の一欠片が残っていれば時間をかけて再生します。ですがゴーレムトルーパーは常にモンスターの細胞を破壊するナノマシンを増殖させて周囲に放っており、ゴーレムトルーパーの攻撃を受けたモンスターは体の再生が停止するのです」
ピオンの話にホムンクルスの女性達を除いたこの場にいる者達は驚きを隠せずにいた。モンスターはゴーレムトルーパーでしか倒せないのは惑星イクスの常識であり、ゴーレムトルーパーがモンスターとの戦いの為に作られたことは知っていたが、そのような理由があるとは知らなかったからだ。
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