人機一体
「う、ぐうぅ……!」
機獣開眼モードとなり獣のような動きで蛇のモンスターを攻め立てるドランノーガの操縦席の中で、サイは苦悶に満ちた表情になって呻き声を出していた。
重量級の機体でありなはら高速で縦横無尽な動きを見せるドランノーガ。その動きの反動は凄まじく、ドランノーガに乗っているサイ達は、常に四方八方から体が押し潰されそうな衝撃に襲われているのだった。
(こ、このままじゃ体が保たない……! 早く何とかしないと……!)
絶え間無く襲いかかってくる衝撃はナノマシンで体を強化されたサイと、人間よりも頑強な体に作られたホムンクルスのピオン達だから何とか耐えられるもので、それ以外の者ならば「超人化」の異能を使っても耐えられず気を失ってしまい、通常の人間ならばとうに死に絶えているだろう。この様な状態がこれ以上続けば自分達もドランノーガも保たないと考えたサイは隣に座るピオンの方を見る。
「お、おい、ピオン。何とかドランノーガを止め……!?」
ドランノーガを止める方法を聞こうとピオンの方を見たサイは、彼女の姿を見て言葉を失った。
ピオンはサイと同じく操縦席から生えた無数の金属の蔦で体を縛られて固定されており、それによって彼女の豊かな乳房が強調されていてドランノーガが動く度に激しく暴れる。見れば小画面に映っているヴィヴィアンとヒルデとローゼもまた同様で、サイ……ではなく巨乳好きな馬鹿は、ドランノーガを止めることも忘れて四人のホムンクルスの女性達の胸を凝視していた。
……巨乳を追い求める助平心もここまでくれば立派である。
「あの、マスター? いつまでも私達の胸を見ていないで何かご用ですか?」
流石に胸を凝視されれば自分達に向けられた視線に気づき、ピオン達が若干呆れた目でサイを見る。
「はっ!? いや、その、アレだ! このままだと俺達もドランノーガも保たないだろう!? 何とかドランノーガを止める方法はないのか?」
「……一応止める事は可能ですけど、今ドランノーガを止めるのはおすすめできません」
四人のホムンクルスの女性達の視線により正気に戻ったサイがドランノーガを止めるように言うが、彼の隣に座るピオンは自分の主人である青年の頼みに首を横に振る。
「な、何でだ?」
『今ドランノーガを止めたらもう勝機はないからですよ、マスター殿』
ピオンに質問するサイに答えたのはピオン本人ではなく小画面の中に映るヴィヴィアンだった。同じく小画面の中に映るヒルデとローゼもヴィヴィアンの言葉に頷いてその理由を説明する。
『現存のドランノーガはリミッターを解除して機体の限界の動きであの蛇のモンスターと戦っています。今機獣開眼モードを解除すればドランノーガは、限界の動きをした負荷が機体のいたる所で発生して、しばらくの間まともに動けなくなります』
『もう一体のゴーレムトルーパー、ハンマウルスはあの蛇のモンスターの動きにうまく対応できないみたいですし、機獣開眼モードを解除するのは蛇のモンスターを倒してからでないと危険です』
「なるほど……。事情は分かったけどこのままじゃ……!?」
ヴィヴィアンとヒルデとローゼに今ドランノーガを止めるわけにはいかない理由を聞かされたサイが何かを言おうとした時、先程から揺れが続いている操縦席に一際大きな振動が起こり言葉が中断される。前を見てみると操縦席の正面の壁に、ドランノーガと組みついている蛇のモンスターの顔が至近距離で映されていた。
ドランノーガの猛攻によって体に無数の傷をつけられたり体の一部を灰にされながらも、蛇のモンスターは未だ死ぬそぶりを見せず敵意のこもった眼でドランノーガを睨みつけており、サイは蛇のモンスターがドランノーガではなく自分達を睨んでいるように感じられた。
「だけどこのままじゃドランノーガが先に参るって! 一体どうしたら……!」
「でしたらマスターがドランノーガの援護をしたらどうですか?」
蛇のモンスターの敵意のこもった眼を見て強い危機感を懐いたサイの言葉を遮ってピオンが一つの提案をする。
「……援護? 俺がドランノーガの?」
「はい。機獣開眼モードにはいったゴーレムトルーパーは下半身の獣が自動で動いて戦いますが、上半身の人型は以前として操縦士が動かす事ができます」
自分の言葉に頷いて答えるピオンの言葉を聞いてサイは、確かにドランノーガの上半身の騎士は全く動かず下半身の竜の動きに振り回されているのを思い出す。
「自分の意思で戦う下半身の獣を操縦士が上半身の騎士で援護をする。人馬一体ならぬ人機一体の戦い。それがゴーレムトルーパーの真の姿である機獣開眼モードの強みなのです」
「ドランノーガを援護……それだったら」
ピオンの言葉を聞いたサイは、自分が座っている操縦席の肘掛けの先にある球を握りしめて自分の意思を伝える。
『………!』
すると今まで全く動かずドランノーガの下半身の竜の動きに振り回されてばかりだった上半身の騎士が、一瞬両目から強い光を放ってから動き出したのだった。
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