来客室での会話

 ランがサーシャ、アミーナ、カレンの三人に連れてこられたのは食堂ではなく、二日前にサーシャとアースレイが会話をした来客室であった。来客室はすでに使用の許可が出ていた上、四人分の昼食の準備が出来ていて、それを見たランはサーシャ達が最初から自分をここに連れてくるつもりだったと理解した。


 昼食の様子は穏やかで、用意された食事も士官学校の食堂で出される食事よりもずっと上等なものであった。しかしフランメ王国の人間ではないと見破られているランは生きた心地がせず、せっかくの食事もまるで味がしなかった。


 そして食事の途中で時折行われるサーシャのイーノ村での思い出話、という名の尋問ではランは何も答える事が出来ず精神をすり減らし、食事が終わるといよいよサーシャ達三人はランに「貴女は何者だ?」という核心をつく質問をした。この質問によりランは半ば自暴自棄となって力づくで来客室から脱出しようとするのだが、それはすぐに失敗に終わる。


 ドラトーラのナノマシンによって身体能力を強化されたサーシャと、「超人化」の異能を使うアミーナの二人に、異能は使えるものの戦闘系ではないランはあっさりと捕まり、観念したランは全てを話すことにした。


 知っての通り自分がフランメ王国の人間でないこと。


 自分が宇宙の居住空間から来た人間であること。


 自分達の目的が惑星イクスの調査であること。


 そしてランの話を最後まで聞いたサーシャ、アミーナ、カレンの三人の反応は……。


「ふ~ん? ランってばー、宇宙から来た人なんだー? それって宇宙人ってことになるのー?」


「なるほど。宇宙から来た人でしたか……。それでしたら一般常識を知らなかったり、妙に高度な知識を持っていたりする知識の差にも納得できますね」


「あとアイゼン王国とフランメ王国が調べても出身地が分からなかった理由も納得です」


 と、全員がランの話を受け入れており、これには話をしたランの方が驚いた。


「……え? あの三人とも私の話を信じるの? てっきりその場しのぎの嘘だと言われると思っていたのに?」


「私はー、お兄ちゃんのドランノーガとかピオンさん達……ああ、お兄ちゃんのホムンクルスさん達ねー? そーいうのを見てるからー、そんなのを作った前文明だったらー、宇宙とかもありかもーって、納得してるー」


「ランさん。宇宙がどれだけ文明の技術力が高いかは予想しきれませんが、あまり私達地上を甘く見ないでください。ごく最近の研究ですが、宇宙に人が暮らしている可能性はこちらでも確認しています」


「前文明の研究はどの国でも重要な研究ですからね。そして前文明の研究をしていればどの分野でも宇宙にある居住空間の存在が見えてきますから」


「そ、そうなんだ……」


 サーシャ、アミーナ、カレンが宇宙の居住空間を信じる理由を話すとランは思わず驚いた顔となる。そしてサーシャ達三人は驚いた顔となっているランを置いてこれからの事を話し合う。


「それでー、これからどうするー?」


「そうですね……。ランさんが他国からの間諜であるという確信は得られたのですが……」


「まさかの宇宙からですからね……。ここは予定通り、上の方に報告するべきでは?」


 カレンの言葉にアミーナは頷くとその場で立ち上がって他の三人を見る。


「カレンさんの言う通りですね。では皆さん、早速行きましょうか」


「行くってどこにー? というか午後の授業はー?」


「アースレイ叔父様の所です。午後の授業は無視しましょう」


 サーシャの疑問にアミーナは当然のように答えた。


「それに……今から行ったところで間に合いませんし」


 壁にある時計を見れば、ランの話を聞いているうちに午後の授業の開始時間はすでに過ぎていた。

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