エレナの噂

「……ぷっ。あっははは!」


 異口同音で言い放つサイとビークポッドの姿にピオンが大声で笑い出す。見ればヴィヴィアンにヒルデ、ローゼも笑っていた。


「本当にマスターってば、嘘がつけない方なんですね。……でもあのエレナという方より私達の方が可愛いと言ってくれたのは嬉しく思います。……そうですね。マスターにビークポッドさん? 今からささやかなお礼をしたいと思いますから、ちょっと待っていてもらえます?」


 ピオンはそう言うと、ヴィヴィアンとヒルデにローゼの三人に耳打ちする。するとピオン達四人はそれぞれ自らの制服の胸元をはだけだした。


 ピオン達四人のホムンクルスの女性は、制服の下に下着の類を身につけておらず、少し胸元を開くだけでそこから艶やかな柔肌が見えてくる。ちなみに制服の下に下着の類を身につけないのは、四人のホムンクルスの女性のリーダーであるピオンの指示によるものであり、サイの趣味嗜好とは関係がない。……多分。きっと。


 そして乳首が見える寸前まで胸元をはだけたピオン達四人は、サイとビークポッドの前で横一列に並んだ。


「それじゃあいっきますねー♪ それ♪ それ♪」


 ぷるん♪ ぷるん♪


 ピオンの言葉を合図にホムンクルスの女性四人がその場で何度も飛び跳ねた。それによってピオンの形がよくて瑞々しい巨乳が揺れる。


「よっ、はっ」


 ぷるん♪ ぷるん♪


 ヴィヴィアンの若々しくて張りのある巨乳が踊る。


「えい。えい」


 ぷるん♪ ぷるん♪


 ヒルデのこの中で最も大きくて柔らかな巨乳が暴れる。


「よいしょ♪ よいしょ♪」


 ぷるん♪ ぷるん♪


 ローゼの唯一褐色の肌をした巨乳が震える。


 合計八つの乳房が揺れ動く光景。それこそまさに男が夢見た光景の一つであった。


「「………!? あ、ありがとうございます!」」


 男の夢を目の当たりにして勢いよく腰を直角に曲げて礼を言うサイとビークポッドの巨乳好きな馬鹿二人。そんな巨乳好きな馬鹿二人の目には感動の涙が浮かんでいた。


「ふふっ♪ どうでした? 楽しんでもらえましたか?」


「「はい! もちろんです!」」


 ホムンクルスの女性四人がその場で飛び跳ねるのを止めてピオンが聞くと、サイとビークポッドは顔を赤くして全くの同時に答える。


「そう言ってくれると嬉しいです♪」


「マスター殿とビークポッド殿に喜んでもらえてよかったです」


「ええ、そうですね」


「たまにはこういうのも楽しくていいですね」


 サイとビークポッドの返事にピオン、ヴィヴィアン、ヒルデ、ローゼの四人が嬉しそうに笑う。


「いやぁ、大変いいものを見せてもらってありがとうございます。やはりエレナ・キャンダルよりもピオンさん達の方がいいですね。胸も大きいし。そもそもエレナ・キャンダルは何やらよくない噂も聞きますし、ピオンさん達と比べるまでもなかったですね。胸も小さいし」


 所々変な事を言いながらピオン達に礼を言うビークポッドこと巨乳好きな馬鹿二号。サイはビークポッドの言葉を聞いて首を傾げた。


「よくない噂? それって何だ?」


「ん? ああ、エレナ・キャンダルは男子生徒達に人気があるのをいい事に、多くの男子生徒を取っ替え引っ替えにして遊び、更にはその男子生徒から金品を貢がせているという噂だ。この噂は非常に信憑性が高い……というか、あれを見ればほぼ間違いなく真実だろうな」


 サイの質問に答えながらビークポッドは数人の男子生徒達に囲まれているエレナを見る。確かにあの姿を見れば、今ビークポッドが言った噂は本当の事なのだろう。


「しかもエレナ・キャンダルは婚約者がいる実家の身分の高い男子生徒を侍らせているらしい。実際、今彼女を囲んでいるのは皆、侯爵家や伯爵家の子息ばかりだ」


「ね、寝取りですって……!」


『………!』


 ビークポッドの言葉を聞いてピオン達四人のホムンクルスの女性の顔に緊張が走る。恐らくは万が一の確率でエレナがサイに接近した場合を想像してしまったのだろう。


「ちなみにあの中の一人はワーキウ侯爵家の嫡男アルベロ・ワーキウだ。このアックア公国でも特に力のある貴族で、ブリジッタ様の婚約者でもある」


「何っ!?」


 エレナの取り巻きの男子生徒の一人、いかにも貴公子といった雰囲気を持つ金髪の男子生徒を指差してビークポッドが言うと、サイはその言葉に反応してブリジッタの婚約者であるという金髪の男子生徒を凝視する。金髪の男子生徒の顔を凝視するサイの脳裏に、ブリジッタの顔と彼女の豊満な胸が浮かび上がった。


「あ、あいつがブリジッタの婚約者? な、なんて羨ましい……!」


「いや、サイ? お前が彼を羨む資格なんてないと思うぞ? お前にはピオンさん達がいるだろう? ……その、非常に羨ましく妬ましい事に、いつもピオンさん達の胸を見ているのだろう?」


 呆れた風に言うビークポッドに、サイは勝利者の顔を向けて言った。


「見ているどころか触って揉み比べています。今朝も揉み比べましたが四人共最高でした」


 次の瞬間、サイはビークポッドの渾身のアッパーを喰らい空を飛んだ。

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