呆気ない決着

『『……………はっ?』』


 クリストミスのゴーレムトルーパーが消えて彼が地面に落ちた瞬間、その光景を見ていたミスト王国の兵士達全員が揃って驚きを通り越して呆けた顔となった。


 突然現れたアイゼン王国を初めとする四ヵ国から来た四機のゴーレムトルーパー。


 そしてこれも突然現れた行方不明だったはずのグレドプテラ。


 トドメに先程まで自分達の目の前にあったクリストミスのゴーレムトルーパーの突然の消失。


 どれ一つとっても理解不能なのに、それが立て続けに起こった今、兵士達の頭は考えることを放棄した。


 何が起こったのか理解できず呆けた表情となっているミスト王国の兵士達の視線の先にあるのは、地面に落ちて気絶しているクリストミスと、自分達とは違う国、フランメ王国の軍服を着ている五人の男女の姿であった。


「思ったより簡単に行きましたね」


「ああ、そうだな」


 フランメ王国の軍服を着ている男女の一人、ピオンは地面に倒れているクリストミスを見た後、隣にいるサイに話しかけて彼もそれに頷いて答えた。


「それにしても愛しのマスターの異能は本当に凄いですね」


「確かにそうですね。まさかすでに操縦士は乗っているゴーレムトルーパーを異空間に収納して無力化するだなんて」


 ヒルデとローゼが心から感動したという視線をサイに向ける。


 クリストミスのゴーレムトルーパーの消失。そしてその前のグレドプテラの出現。これらは全てサイの「倉庫」の異能によるものであった。


 まずサイが事前に収納していたグレドプテラを街中で出現させて兵士達の意識を引きつけ、その間にクリストミスのゴーレムトルーパーまで接近して、今度はクリストミスのゴーレムトルーパーを収納したのだ。


 こうして説明すると簡単に思われるが、これはサイのピオンから言わせれば非常に希少な「倉庫」の異能がなければ実現不可能な作戦で、現代の惑星イクスでの戦いを一撃で終わらせる効果があった。


「………」


 サイ達が話している間、クリスライドは無言で実の父親であるクリストミスを見下ろしていた。しかしこの時のクリスライドの顔には、怒りどころか何の感情も浮かんではいなかった。


「クリスライドさん。この男を殴らなくていいんですか?」


 ピオンがクリストミスを見下ろすクリスライドに話しかける。王都に侵入した時は、この手で父親を殴ってやると息巻いていたクリスライドだったが、ピオンの質問に対して首をゆっくり横に振って答えた。


「そのつもりだったけど、もういいです。……こんな男にはそんな価値はない」


 クリスライドはそれだけを言うと顔を上げ、視線をクリストミスから未だに呆然としているミスト王国の兵士達にと向けるのであった。

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