第364話 いつでも出撃できます

「「「うおおおおおおおおおっ!!」」」


 各国の部隊が橋を渡り、雄たけびと共に宮殿内へ次々と突撃していく。


 もちろん宮殿側もそれを迎え撃とうと、兵たちを集めている。

 けれど、同時に八か所から、しかも予想だにしていなかった奇襲とあって、まったく戦力が足りていない。


 あっという間に蹴散らされ、宮殿内への侵入を許してしまった。


「この一帯は我がゴバルード共和国軍が占拠したぞ!」

「「「おおおおっ!」」」


 敵兵が少ない場所だったこともあってか、真っ先に宮殿内の一角を完全に占拠してしまったのは、ゴバルードの兵団だ。

 ちなみに連携が取れやすいよう、基本的に国ごとに団を形成させている。


 中でも最も士気が高いのが、すでに帝国軍による侵攻を受け、王都にまで迫られていたローダ王国の兵団だった。


「我が国の領土を蹂躙された恨み、ここで晴らしてやる!」

「ローダ王国に栄光あれ!」

「「「うおおおおおおおおおおっ!」」」


 敵兵からの抵抗も激しい地点だったものの、怒りの燃える彼らは、帝国の兵たちを次々と打倒していく。


「くそっ、何なんだ、この兵たちは!?」

「ローダ王国だと!? なぜ突然この宮殿に……っ!?」


 帝国兵たちは、未だに事態を理解できず大いに困惑している。

 と、そのときだった。


 大きな足音を響かせながら、巨大な人型兵器が宮殿の奥から姿を現す。


「っ! 助かった! 巨人兵だ!」

「ははははははっ! ローダ王国の奴らめ、巨人兵が来たらもうこっちのものだぞ!」


 勝ち誇る帝国兵たち。


「よし、今だ」


 ……実はここまでの戦場の様子、強化マップの機能であるヴィレッジビューによって、僕はずっとリアルタイムで見ていたのだ。

 敵の巨人兵が出てくるこのときを待っていた。


「準備はいい?」

「問題ありません! いつでも出撃できます!」


 村のドワーフたちが一から製造してくれた巨人兵の中から、操縦士が威勢のいい返事をくれる。

 帝国の操縦士から指導を受けて、巨人兵を扱えるようになった村人だ。


 僕――身体は影武者だけど――は瞬間移動を使って、その巨人兵を戦場へと投入した。

 巨人兵が装備扱いになるお陰で、瞬間移動で運べるのだ。


「っ!? 巨人兵!? どこから現れた!?」


 目には目を巨人兵には巨人兵を作戦に、驚愕する帝国兵たち。

 さらにこのときに備えて、すでに魔力砲の発射準備を整えていた。


 敵の巨人兵の脚部を狙い、腹部の発射口から強烈な一撃をお見舞いする。


 ドオオオオオオオオオオオンッ!!


 右の脚部を吹き飛ばされた敵の巨人兵が、勢いよくその場にひっくり返った。

 これでもう戦うことは不可能だろう。


「どういうことだ!? あの巨人兵は敵のものなのか!?」

「巨人兵が破壊された……っ!?」

「しかも敵側に巨人兵……そんな……」


 帝国の快進撃の原動力となっていた頼もしい巨人兵が、今度は敵として彼らの前に立ちはだかったのである。

 その絶望は大きく、その場にいた帝国兵たちは完全に戦意を喪失していた。


 さらに別の箇所でも巨人兵が投入されてきたので、こちらもまた巨人兵を送り出す。

 そうして次々と敵の巨人兵を破壊していった。


 全部で何機くらい宮殿守護に利用されているか知らないけれど、さすがにこれを何度か繰り返していれば、もう巨人兵を投入することなんてできないだろう。


 ちなみに巨人兵は魔力で動く。

 完全に充填させるのにかなりの量の魔力が必要で、今回この戦いに間に合わせることができたのは十機が限界だった。


 なので、無限に巨人兵が出てきたら困るのだけれど、幸い先んじてヴィレッジビューで宮殿内部を調査していて、広いのですべて調べ切れたわけではないものの、全部で恐らく七機ほどしかないと思われる。


「さて、宮殿内はもう大混乱って感じだね。そろそろ本隊を送り込む頃合いかな」


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