第360話 簡単に覗きができてしまう

「首相に確認いたしましたが、もちろん構わないとのこと!」

「国王陛下は、それで我が国が救われるというのならば、是非にと申しておりました!」

「「「我が国も陛下からの許可をいただきました!」」」


 使者団の人たちに詳しい事情を説明すると、本国からすぐに了承をもらってきてくれた。

 切羽詰まった状況かもしれないけど、そんなに簡単にOKしちゃっていいのかな……。


 ちなみにこの村人登録はあくまで一時的なもの。

 今回の件が解決すれば、また登録から外す予定だと伝えてある。


 それでも村人に登録してしまうと、村人鑑定スキルを使って、いつでも簡単に個人情報を得ることができてしまうわけで。

 他国の人間が、自国民の情報を容易く取得できてしまうなんて、危険極まりない話である。


 もちろん悪用するつもりはないけど。


「ふふふ、大丈夫ですよ、ルーク様」

「……何を根拠に?」

「(すでに使者団はルーク様の従順な信徒ですからね……余計なことは国に話していないはずです……ふふふ)」


 なんだろう、ミリアの笑みが嫌な予感しかしない……。


 ともあれ、これによって、一時的にとはいえ、村人が爆発的に増えた。


 セルティア王国民の大部分に相当する約二百万に、キョウの国の全国民およそ四十万、その他もろもろを含めて、元々は二百五十万ほどだった。


 そこに、ローダ王国から約三百万、ゴバルード共和国から約百五十万、アテリ王国から約五十万、スペル王国から約四十万、メトーレ王国から約六十万、それ以外の小国群まとめて約五十万が、新たに加わったのである。


 当然、次のレベルアップに必要だった三百万人を軽く超えたので、


〈パンパカパーン! おめでとうございます! 村人の数が3000000人を超えましたので、村レベルが13になりました〉

〈レベルアップボーナスとして、30000000村ポイントを獲得しました〉

〈作成できる施設が追加されました〉

〈村面積が増加しました〉

〈スキル「強化マップ」を習得しました〉


「強化マップ……?」


 マップ自体は、最初から使うことが機能だ。

 もしかしてそれの強化版ということだろうか?


 実際に確かめてみると、思った通り機能が大幅に強化されていた。


 例えば今まで、マップ上には施設の位置とともに、村人が黒い点によって表示されていたのだけれど、誰がどの点であるかまでは分からなかったのだ。

 それがこの強化マップでは、カーソルを合わせるだけで名前が表示される。


 村人の名前による検索機能も追加されたようで、これで誰が今どこにいるのか、簡単に分かるようになった。

 さらにこのマップ上から、村人鑑定スキルを使うこともできる。


「ってことは、ますます他国の情報を入手し放題じゃないか……」


 極めつけが、ヴィレッジビューという新機能だ。

 好きな地点のリアルタイムな映像を見ることができるというもので、つまり。


「……簡単に覗きができてしまう……この機能のことは誰にも教えない方がいいよね、うん……」


 もちろん覗きなんてしないけど、疑われた場合に無実を証明する方法がなく、非常に危険だ。


 他にも、マップ上で幾つかのスキルを使用できるようになっていたのだけれど、このヴィレッジビューという機能と合わせると、遠く離れた場所にある施設を、三次元配置移動で動かしたり、カスタマイズしたりすることもできそうだ。


「試しに使ってみようかな。ええと、この赤い点が恐らく帝国軍だから……」


 マップを広範囲に広げてみると、あちこちに無数の赤い点が村に入り込んできている。

 各国の王たちから許可を得たことで、新たに加わった領域部分だ。


「ヴィレッジビューで覗いてみると……あっ、軍隊だ!」


 進軍中と思われる軍隊を見ることができた。


 その中には一機の巨人兵が。

 輸送の際はエネルギーを節約させるためか、自力で走行はさせず、大きな台車のようなものに乗せて馬に曳かせているようだ。


 進軍する先を確認してみると、そこには中規模の都市があった。

 城壁はあるものの、かなり古く、巨人兵にかかれば簡単に破壊されてしまいそうだ。


「施設グレードアップを使って、うちの城壁に変更っと」


 画面の中で、立派な城壁へと姿を変えていく。

 敵軍を迎え撃とうと準備を進めていた兵士たちが、驚愕している光景が見えた。


「この強化マップ、すごく便利かも……」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る