第359話 なんと極悪非道な連中なのか

「ルーク様! どうか我がゴバルード共和国にもお力をお貸しください!」

「「「わ、我が国こそ!」」」

「いやいや、ボアン王国こそ、今まさに帝国軍が迫ってきているところでございます! もう一刻も猶予もございません!」


 ローダ王国の王都に攻め入った帝国軍を撃退したという話は、あっという間に他の国々の使者団に伝わってしまったらしい。

 僕のところに押しかけてきて、もはや事情を隠すこともなく、必死に懇願してくる。


 それにしても、どこから情報を得たんだろう?

 まだ村の中でも、一部の人しか知らないと思うんだけど……。


「皆さん、そう慌てなくても大丈夫です。ルーク様にかかれば、どの国も例外なく救ってくださるはずですから」

「ちょ、ミリア!?」


 なに勝手に言ってるの!?


「「「おおおおっ! さすがルーク様だっ!」」」


 ミリアの言葉に、使者団の人たちが歓喜の声を上げた。

 ……なんか最近、彼らの僕に対する態度が、異常なくらい熱い気がする。


 むしろ崇められているかのような……?

 いや、きっと自国を救うために必死になってるだけだね、うん、そうに違いない。


「ていうか、帝国って、どれだけの国に同時侵略を仕掛けてるの……?」


 僕の質問に、代表して答えてくれたのはゴバルード共和国の使者、イアンさんだった。


「それをやれるのが今の帝国なのです。本来、戦力を分散するなど戦略上、あり得ないことなのですが、巨人兵という強力な兵器もあって、次々と国を落としているのです」


 そういえば、おばあちゃんに更生してもらった操縦士によれば、巨人兵は少なくとも十機はあるらしい。

 操縦士でも正確な総数は分からないみたいだけど、一機でもあれば大抵の城壁は一瞬で破壊できてしまうので、戦いがかなり有利になるだろう。


「加えて帝国は、属国にした国の民たちを自軍の兵にしているのです。兵士の家族らを人質に取っているため、逆らうことはできないと聞きます」

「しかも奴らは逃げようとした兵士を捕らえ、惨たらしい方法で処刑しているという! 要するに見せしめだ! なんと極悪非道な連中なのかっ!」

「あんな国に、我が国が支配されてしまったら、一体どれだけの国民が犠牲になることか……」


 イアンさんに続いて、他の国の使者たちが声を荒らげ激怒し、またそれが己の国に降り注ぐことを想像して大いに嘆く。


「ルーク! 力を貸してあげるわよ! その帝国とやら、さすがに許せないわ!」


 話を聞いていたセレンが義憤に駆られて叫んだ。


「セレン……そうだね。僕の力でどこまでできるかは分からないけど、やれるだけのことはやってみよう」







「こんなこともあろうかと、一応影武者たちを各地に向かわせてはいたんだ」


 領地強奪スキルによって村の範囲を広げられるようにするため、影武者たちを各国にこっそり派遣させていた。

 いったん村の領域内に置いてしまえば、瞬間移動で簡単に飛べるからだ。


「まずは万里の長城みたいに、帝国軍が侵攻してこれないよう、それぞれの国境に城壁を作っていこうかな」

「でもそれで侵略を諦めるような国じゃないでしょ。すでに占領されてる都市や国もあるって言うし。もう直接その帝国とやらに乗り込んで、偉いやつを捕まえて更生したらいいんじゃないかしら?」


 セレンが随分と過激な提案をしてくる。


 操縦士たちによると、帝国のこの過激な侵略戦争は、現在の皇帝になって以降、一気に加速したという。

 帝国内にはタカ派もハト派もいるけれど、やはり絶対的な権力を有する皇帝の意向が大きいそうだ。


「じゃあ、その皇帝っていうやつをやっつけたらいいわけね」

「……残念だけど、それは難しいかな」

「何でよ?」

「まだそこまで村の領域にすることができないんだ」


 今のギフトのレベルだと、帝国は遠すぎて村の範囲に入らないのだ。

 せめてあと一回くらいレベルアップしてくれれば……。


 頭を悩ませていると、ミリアが言ってきた。


「ルーク様、それなら各国にお願いしてみてはいかがでしょうか? 国民を村人に登録させていただけないか、と」

「え」

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