第200話 これで行けちゃうね
柵の脇の壁には「 □ → × → △ → 〇 」という記号が書かれていた。
どこかで見たことのあるものだ。
「そういえば迷路の途中、この記号に相当したスイッチがあったね」
「実はそうでして……このスイッチを押さないと、通れない仕掛けのようで……」
先ほどまで意気揚々と案内してくれていたのに、申し訳なさそうに言うカムルさん。
あらかじめ気づいていれば、押しながら来ることができたからだろう。
「うーん、でも、これ多分、矢印の順番に押さないとダメなやつかと」
「あ、なるほど……」
「なのでどのみち、ここまで来て順番を把握しないといけなかったみたいですね」
なかなか意地悪なギミックだ。
ラウルも「めんどくせぇな」と吐き捨てている。
「普通なら確かに面倒だけどね」
僕は言った。
「瞬間移動を使って押してくるから」
今まで通ってきたところは、すでに村の領域内に入っている。
だから瞬間移動のスキルが使えるのだ。
「そ、そんなことまでできるのかよ……」
「さすがルーク村長ね」
反則だろ、という顔をするアレクさんたち。
「あ、そんな必要もないか」
僕は思い直した。
近くにいたセレンとセリウスくんの腕を掴むと、そのまま瞬間移動を使う。
すると僕たちは柵の向こう側に移動することができた。
「ちょっとズルいけど、これで行けちゃうね」
「「「……」」」
言葉を失っているみんなを、僕は順番に柵の先へと移動させていった。
これでわざわざ仕掛けを攻略しなくても先に進むことができるぞ。
遺跡はダンジョンのように階層構造になっているようだった。
そして下層に進むほど、魔物が凶悪になっていく。
「くっ! こいつ、なかなか強ぇぞっ!」
「良い動きしてるわね!」
アレクさんやセレンと激しくやり合っているのは、スケルトンの剣士たちだ。
最初の頃に遭遇していたのとは、動きも剣の腕も段違いである。
それでも、そこは村の精鋭たちだ。
アレクさんが隙を突いて大剣で頭蓋を叩き割ると、セレンは氷魔法でスケルトンの動きを鈍らせてから、素早くその首を刈り取った。
だけどその間に、スケルトンの剣士は、中盤にいる僕たちにも襲いかかってきた。
フィリアさんが放った矢が骨を粉砕したものの、骸骨剣士はまるで動じることがない。
「……むう。やはりアンデッドを相手に弓矢は厳しいな」
「ぼ、ぼくに任せてください!」
すかさず飛び出したセリウスくんが、スケルトンと剣を交えた。
うんうん、フィリアさんの前で良いところを見せないとね。
「うおああ~~」
ゾンビも随分と強化されていた。
なぜか四足歩行になっており、壁に張り付いたりといったアクロバットな動きもしながら襲い掛かってくるのだ。
「こいつらマジ怖いんだけど!」
「亡者どもめ」
ハゼナさんが炎で丸焼きにしてもまだ飛びかかってきたので、それをガイさんが棍で弾き飛ばす。
一方、ラウルは、後方から現れたもう一体のゾンビの首を切り落としたが、
「ラウル様!」
「なにっ?」
首だけになってなお、ラウルの足に噛みついてこようとしたところへ、マリンさんがすかさず槍で串刺しにしてトドメを刺した。
「はっ、少しは楽しませてくれるじゃねぇか」
現れる魔物は、こうした単純なスケルトンやゾンビの上位互換アンデッドだけじゃない。
ガチャンガチャン、と金属音を響かせながら躍りかかってくるのは、動く全身鎧だ。
リビングアーマーと呼ばれ、死んだ戦士の魂が鎧に宿って戦い続ける、アンデッドモンスターの一種である。
鎧そのものと言ってもいい魔物なので、防御力が非常に高い。
アレクさんの大剣をまともに受けて兜がへしゃげても、まったく怯まず攻撃してくる。
そしてハゼナさんの炎の魔法が効かない。
「ならばこれでどうであろう!」
光を纏う棍で、ガイさんがリビングアーマーを突く。
するとなぜか急に動きが止まり、鎧の各部がバラバラに地面に崩れ落ちた。
「浄化の魔法である。アンデッド相手ならやはりこれが効果的であろう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます