第201話 肩の上を借りるぞ
リビングアーマーの他にも、ミイラやゾンビスライム、六本腕のスケルトン、それに人を喰らうグールなどといったアンデッドが遺跡内を徘徊していた。
ゾンビスライムは、可愛らしい最弱モンスターである通常のスライムとは似ても似つかない、凶悪なスライムだった。
腐臭を漂わせる三メートルほどの巨大な塊で、物理攻撃はすべて無効。
一部を斬り飛ばしても、すぐに本体とくっ付いて元通りになってしまうためだ。
倒すには、ハゼナさんの火魔法で焼くか、セレンの氷魔法で凍らせるしかなかった。
もし物理攻撃の戦士ばかりだったら詰んでいたことだろう。
トラップも下層に行くほど凶悪になっていった。
左右から壁が迫って圧殺しようとしてきたり、突如として地面の床が抜けて針山の上に落そうとしてきたり、喰らえば致死的なものばかりである。
幸いカムルさんのお陰でどれも事前に察知することができた。
ギミックも段々と複雑なものになっていく。
一方向にしか通り抜けられない扉が無数にあったり、各所に配置された複数のスイッチを同時に押さなければ隠された扉が出現しなかったり。
まぁ、面倒なのは瞬間移動を使ったりして楽をさせてもらったけど。
「こ、ここはかなり危険な臭いがしやす……」
カムルさんがブルリと身体を震わせたのは、広大な部屋への入り口だ。
そこには石でできた箱のようなものが無数に置かれていた。
「近いのはここだけど、回り道もできるかと……」
「ふん、こっから行けるんだろ? だったら行くぜ」
カムルさんの提案を突っ撥ねて、ラウルが勝手に部屋へと入っていく。
仕方なく僕たちはその後を追った。
すると無数に置かれた箱の蓋が、一斉にズリズリと動き始めた。
蓋が開かれ、中から起き上がったのは百体を軽く超えるミイラだ。
どうやらあの箱はすべて棺桶だったらしい。
ミイラの大群が怒涛の如く襲いかかってくる。
さらにガシャリという音が背後で響いたかと思うと、入ってきた扉が自動的に閉まっていた。
逃げ道を塞がれてしまったみたいだ。
「だ、だから言ったのに……」
カムルさんが頭を抱える。
「ちょっと、何やってんのよ、ラウル!?」
「はっ! 全員まとめてぶっ倒しちまえばいいだけだろうが!」
咎めるセレンに怒鳴り返して、ラウルはミイラの群れの中へと単身で飛び込んでいった。
嵐のごとき斬撃が、迫りくるミイラを次々と斬り飛ばしていく。
だけど痛覚を持たないミイラは、腕や頭を失っても簡単には倒れない。
「ラウル様!」
このままではミイラの群れに呑み込まれてしまいかねないと、慌ててマリンさんが突撃していった。
「ふん! この程度でオレがやられると思うな!」
……まぁラウルなら大丈夫そうだけど。
というか、以前よりもますます強くなってる気がする。
「もう! 私たちも行くわよ!」
「はい、姉上!」
セレン、セリウスくん、それにアレクさんたちパーティも続いた。
ミイラが厄介なのは、全身に巻き付いた包帯を飛ばし、こちらを拘束しようとしてくることだ。
もしこれだけの大群を前に動きを封じられたら、一巻の終わりだろう。
だけど、さすがは実力者ぞろい。
ラウルを筆頭に、順調にミイラの数を減らしていく。
「ファイアジャベリン!」
全身包帯のミイラなので、中でもハゼナさんの魔法が効果的なようだ。
「僕も加勢しよっと」
僕は身の丈三メートルのゴーレムを作り出すと、ミイラの群れへと突っ込ませた。
巨大な拳でミイラを殴り飛ばしていく。
「ルーク殿、肩の上を借りるぞ」
フィリアさんがそのゴーレムの肩の上へ登り、そこから矢の雨を降らせた。
ただの矢ではアンデッド相手にダメージが薄いため、緑魔法で風を纏わせた矢だ。
肉を抉り取るような威力の矢が、ミイラを射貫いていった。
気づけば百体を超えていたミイラを、あっという間に全滅させている。
「もう終わりか。はっ、このメンバーなら国くらい落とせるんじゃねぇか」
中でも一番多くミイラを倒しただろうラウルが、どこか楽しそうに言う。
対照的に、死屍累々と転がるミイラの死体(?)を見渡しながら、マリンさんは戦慄したように呟いた。
「こんな短期間であれだけの数のミイラを……確かに途轍もない面々ですね……」
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