第198話 それならオレも文句はねぇ
『え? 王都の地下に謎の遺跡を発見したって?』
『うん、鉄道を地下に潜らせようとしてたら偶然見つけちゃって。それで調査を行うことになったんだけど、魔物がいたりトラップがあったりして、ダンジョンみたいになってるんだ』
僕は王都にいる影武者とやり取りしていた。
『なるほど。それで協力してほしいってことか』
『うん。そっちには本物のダンジョンがあるし、経験者も多いだろうからって』
詳しく聞いてみると、王都地下に遺跡があるなんて王様も知らなかったという。
学者によれば、建国より遥か以前にまで遡る古代の遺跡だそうだ。
かつてこの地に巨大な帝国があったという記録が残っていて、もしかしたらその当時に作られたものかもしれないとか。
『王様に言われちゃったら断れないなぁ……』
『王様というか、ラウルがそう主張してきたんだけどね』
『ラウルが?』
僕の弟であるラウルは現在、王都に残って国軍の強化に努めていた。
何だかんだで頑張っているらしく、王様からも信頼されているみたいだった。
『ともかく詳しい話を聞いてみようかな』
「よし、準備はいいな?」
遺跡の入り口前に集まった面々を見回し、ラウルが呼びかけた。
「魔物も強力で、トラップも厄介。かなり難易度の高いダンジョンだ。気を引き締めていくぞ」
「って、何であんたがリードしようとしてんのよ?」
と、少し喧嘩腰で指摘したのはセレンだ。
以前バチバチにやり合った相手なので無理もないけど。
あれから色々とありつつも、こうして探索チームを結成し、今から件の遺跡へと潜る予定だった。
ラウル側は彼自身ともう一人の計二人だけで、それ以外は全員が村からの参加者である。
「ああ? この中で一番強くて偉いのはオレだ。国王陛下から国軍再建のために将軍位を戴いてるしな」
「だけどメンバーはほとんどこっちでしょ。ダンジョンの探索経験もあるし、私がリーダーをした方がいいと思うんだけど」
「まぁまぁまぁ、二人とも喧嘩しないでよ」
睨み合う二人の間に僕は割り込んだ。
「これから一緒に調査するんだし、仲良くいこうよ。ね?」
ピリついた空気を和らげようと務める僕。
するとなぜか二人から一斉に言われた。
「ちっ、だったらてめぇがリーダーやれ、ルーク。それならオレも文句はねぇ」
「そうね。ルークがリーダーならいいわ」
「えええっ? 何でそうなるのさ!?」
リーダーに指名されてしまう。
しかも二人の意見が完全に一致していた。
「それがいいと私も思う」
「ぼくも異論はない」
「村長がいちばん」
「みんなまで!?」
フィリアさんやセリウスくん、それにノエルくんまでもが同意してくる。
なお、他にもダンジョン攻略に慣れているアレクさんたち冒険者一行や、『迷宮探索』ギフトを持つカムルさんにも参加してもらっていた。
もちろん村からは僕の瞬間移動でこっちに来た。
「はぁ……そういうのあんまり得意じゃないんだけど……」
不安を覚えつつも、ラウルとセレンが喧嘩するよりはマシだ。
そんなわけで、僕がこの探索チームを率いることになってしまったのだった。
ちなみにこの僕の身体は影武者で、本体の意識を移している状態だ。
なので、とても安全に遺跡を探索することができる。
……そうでないとセレンが僕の同行なんて許してくれなかっただろう。
「ええと、前はアレクさんたちにお願いしてもいいですか?」
「おう、もちろんだ。この中じゃ一番慣れてるだろうからな」
「あと、ノエルくんも。サポートしてあげてね」
「分かった」
そしてアレクさんとノエルくんを先頭に、ディルさんとガイさん、ハゼナさんとカムルさんと続き、その後に僕とセレン、フィリアさんとエルフの優秀な治癒士であるクリネさん、それからセリウスくんという順番だ。
最後尾はラウルと彼の副官――マリンさんという女性の槍使い――に任せてある。
合計十三人。
狭い通路などもあることを考慮すると、ギリギリの人数だろう。
そうして僕たちは謎の遺跡へと足を踏み入れるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます