第152話 連射できるようにしたやつもある
「ルーク村長! ルーク村長っ!」
「どうしたの、ドランさん? そんなに慌てて」
「こ、工房に! 今すぐ工房に来てほしいだ!」
「……?」
その日、僕は村のドワーフたちが働いている工房に呼び出された。
もちろん鍛冶工房だ。
彼らドワーフは鍛冶の才能に秀でていることもあって、彼らの多くがここで武具類の製造に携わっている。
日の当たる場所が苦手な彼らの居住区であるダンジョンの中に作られていて、そのためダンジョン産の素材を直で仕入れることが可能だ。
彼らが作る武具は量産品ですら非常に質がいい。
しかも値段が安く、村にやってきた商人や冒険者の多くが「何かの詐欺なのでは」と疑うほどだった。
そんな彼らドワーフの中でも、『鍛冶』のギフトを持つ職人たちは、何らかの「スキル」が付与された特殊武具を作っている。
スキル持ちの特殊武具は本来かなり希少で、世界的にも非常に数が少ない。
たとえ『鍛冶』のギフトを持っていても、滅多に作り出せないものだからである。
……うちのドワーフたち、当たり前のように作ってるんだけど。
それどころか、彼らは競い合うようにして、より高い効果量の武具、あるいは新たな「スキル」が付与された武具を次々と作り出していた。
「村長にぜひ見ていただきたいものがあるだ!」
なんというか、すごく嫌な予感が……。
エルフたちのことを思い出して、僕は軽い頭痛を覚える。
「ドナ、あれを見せてほしいだ」
「ん」
ドランさんに促され、前に出てきたのは剣を手にしたドナだ。
彼女は最近『兵器職人』というギフトを授かった女の子で、それから短期間に創造的な武具を幾つも生み出していた。
ドナが一見すると何の変哲もない剣を振るう。
すると次の瞬間、そこから猛烈な雷撃が放たれ、用意されていた的に直撃した。
「け、剣から魔法……? まさか、これは……」
「そのまさかだ! これこそ魔剣と呼ばれる伝説の武器だべよ!」
「魔剣……っ!?」
魔剣というのは、読んで字のごとく、使用することで魔法が発動される剣のことだ。
魔法を使えない人でも使用でき、しかも魔力消費や詠唱が一切必要ない。
考えただけでも強力すぎる武器だ。
いや、もはや兵器と言ってもいいかもしれない。
「鑑定したところ間違いないそうだぁ。魔剣製造は、かつておいらたちの先祖が行っていたというが、とっくに失われたはずの技術……まさか、それを蘇らせちまうなんて……」
感極まったのか、ドランさんは涙声で言う。
「貴重なミスリルが必要なため、さすがに量産は難しいべ。ただ、必要なら何本でも製造できるはずさぁ。もちろん火や風なんかの魔剣も作れるだ」
……フィリアさんによれば、かつてドワーフたちの帝国が、強大な武具を持って世界を支配しようとし、天罰を受けて滅びたらしい。
魔剣もその一つなんじゃ……。
当然こんなものが村で作れると知れ渡ったら、大変なことになってしまう。
「……これも秘密にしておいた方がよさそうだね」
その後もドワーフの工房では、ドナが中心になって様々な武器が開発されていった。
「これは受けた攻撃をそっくりそのまま跳ね返す盾」
ドナが手にした盾に向かって矢が放たれる。
すると不思議なことに、盾に直撃した瞬間、矢が反転して射手の元へと返っていってしまった。
「な……」
「もちろん魔法も跳ね返せる」
唖然とする僕を余所に、ドナはまた別の武器を見せてくれた。
「これは狙った相手を必ず射貫けるボーガン。矢が勝手に追尾してくれる」
ちょうど上空を飛んでいた鳥に向けて矢を放つ。
すると矢は大きく弧を描きながら鳥を追いかけ、見事にその小さな身体を貫いてしまった。
「これは小型のゴーレム兵。敵に突っ込んでいって、勝手に自爆してくれる」
ドゴオオオオオオオオオオンッ!
なんかめちゃくちゃ危険なのも来た!?
「他にもある。魔力を使い、大きな鉄の弾を発射するやつ。それを小型化させたやつ」
「ちょ、ちょっと待って!」
僕は慌ててドナを遮る。
「ど、どうやって作ったの、それ……?」
「? 自分で考えた」
いやいや、それって完全に大砲とか銃だよね!?
この世界では魔法が存在することもあってか、こうした類の武器を今まで見たことなかったのに……自分で一から作るとか……。
しかも弾丸を安定させるため、砲身に螺旋状の溝が掘ってあった。
「連射できるようにしたやつもある」
「機関銃まで!?」
おかしい。
この子だけ文明の進み方がおかしい。
僕は思わず言った。
「ええと……もう少し自重してもらってもいいかな……?」
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