第254話 更生させてあげないとねぇ
「ば、馬鹿な……我がアレイスラ大教会が誇る聖騎士たちが……」
カイン上級神官は目の前で起こった光景が信じられず、思わず呻いていた。
謎のメイドが率いる村の住人たちに、連れてきた聖騎士たちが圧倒され、あっさり全滅させられてしまったのである。
「全員が戦闘のギフト持ちだぞ!? それがこうも簡単に……。いや、そうか! 貴様らもギフト持ちなのだな!? 戦闘のギフト持ちをこれだけ揃えることができるとは……っ! やはりこの村で、異端の神官が勝手に祝福を与えているとの噂は本当だったか!」
得心がいって、声を荒らげるカイン。
「だが、それでも一体なぜこれほどの差が……」
「皆さん、この村の訓練場で日々、厳しい訓練を積んでいる上に、ドワーフたちが作り出した最高級の武具も装備していますから。といっても、もちろん全然この村の主力ではありませんよ? わたくしがこういうこともあろうかと、いつでも動かせる戦力として密かに組織した特別部隊です」
「き、貴様は何者なのだ……っ?」
どう考えてもただのメイドではない。
そう確信するカインに、そのメイドは「あ、申し遅れました」と悪びれる様子もなく言ってから、
「わたくしはミリアと言います。ルーク様の専属メイドにして、この村で唯一の神官をしています。以後、お見知りおきを」
「き、貴様ぁっ! 我々にこのような真似をして、許されると思うなぁっ!」
鉄格子の奥から怒鳴り声をあげるカイン。
しかしミリアと名乗ったメイド、いや、異端の神官はやはり何も動じることなく、平然と微笑んでいる。
聖騎士たちが全滅させられた後、カインたち神官は村人たちに捕えられ、この牢屋へと押し込まれてしまったのだ。
「神を冒涜する異端神官め! 貴様には必ず天罰が下る!」
「ふふふ、そうですか。後学のためにぜひ聞かせていただきたいのですが、天罰とは具体的にどのようなことが起こるのでしょう?」
「貴様のような存在は確実に火炙りだ!」
「なるほど、火炙りですか。天罰というより、人為的なものですね」
「アレイスラ大教会は神の意志そのもの! 我が下す刑は天罰に等しい!」
「へぇ、金と権威にしか興味がなく、戦乱の世にあって人々の救済に何の役にも立たなかったアレイスラ大教会が、神の意志の代弁者と。何かの笑い話ではありませんか?」
「な……っ!」
「教会長からして、美女を周囲に侍らせながら、日がな一日肉ばかり食べ続け、ぶくぶくと牛のように太っていると聞きます。そんな者が、神を語るなど片腹痛いにも程がありますね」
「き、貴様ぁっ! アルデラ様をも愚弄するかっ!?」
不敬極まりない異端神官の発言に、カインは激昂のあまり鉄格子があることも忘れて躍りかかろうとしてしまう。
当然ながら鉄格子に激突し、尻餅を突いてしまった。
「き、貴様とこの村はもう終わりだ! このことを知れば、王国中の教会という教会が力を合わせ、この村を潰そうとするだろう! そして教会が要請すれば、ほとんどの諸侯が強力に応じるはずだ! この村がどれだけの戦力を持っていようと一溜りもあるまい!」
「果たして本当に応じますかね? すでに王国中の領地がルーク様のギフトの恩恵を受けて……いえ、今ここで説明したところで意味はありませんね。ネマ様、ここからはいったんお任せしても?」
「ああ、あたしに任せておきなよ」
現れたのは小柄な老婆だった。
その瞬間、カインの背筋をぞわりと嫌な感覚が襲う。
思わず後退るカインに、老婆は不気味な笑みを浮かべながら、
「まずはその腐り切った精神を、しっかり更生させてあげないとねぇ」
「こ、こ、更生だと……っ!?」
「なぁに、心配は要らないよ。神官に相応しい綺麗な心にしてあげるんだから、むしろ感謝してもらいたいところだね。まぁ、あたしのはちょこっとだけ、痛みを伴うかもしれないけれどねぇ……いっひっひっひ……」
「~~~~~~~~~~っ!?」
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