第284話 凄い暴れっぷりね

「「「釣竿を作る……?」」」

「うん。あのサメを釣り上げるにはやっぱり釣竿が必要かなって」

「「「???」」」


 みんなそろって首を傾げているけど、実際にやってみれば理解してくれるだろう。


 用意するのは橋だ。


〈橋:鉄筋コンクリート製の橋。高強度。抗劣化。構造や形状の選択が可能〉


 強度が高い上に、そもそも釣竿とよく似た形をしているからね。


 公園の端から海に向かって、全長二十メートルくらいの湾曲した橋を建設すると、施設カスタマイズによってぎゅっと限界まで圧縮する。


 見た目はもはや釣竿そのものだ。

 全然しならないけど。


 さらに施設グレードアップを使い、とにかくその強度を上げまくった。


「この橋の海側の端っこを、丸ごと鉤状に加工して、と……」


 これが釣竿の針になるわけだ。

 後はここに餌のクラーケンを取り付ければ完成である。


 え? 釣り糸はどうしたって?

 細かいことは気にしちゃダメだよ。


「念のため公園はもっと高いところに置いた方がよさそうだね」


 海面すれすれを飛行させていた公園を、海から二十メートルほどの高さまで移動させる。

 一方で、クラーケンを針に取り付けた釣竿を、同じく三次元配置移動を使って海に降ろしていった。


「っ! 来たっ!」


 待つことしばし、海の底から再び巨大な魚影が上がってきたかと思うと、勢いよくクラーケンに噛みついた。


 ぐいんっ、と釣竿ごと凄まじい力で海へと引き摺り込まれそうになったけれど、それは上手く針がその口に刺さってくれた証拠だ。

 負けじと三次元配置移動を使って、むしろ巨大サメを釣り上げようとする。


「~~~~~~~~~~~~~~ッ!?」


 今までこんな事態に遭遇したことなどなかったのだろう。

 クラーケンを海へ引き摺り込むどころか、自分の身体が海の上へと持ち上げられていくその状況に、巨大サメは必死に暴れまくる。


 だけど逃がしはしない。

 施設カスタマイズを使い、口に刺さった針が絶対に外れないよう深く押し込みながら、巨体を宙へと引き上げていく。


「きょ、巨大サメをっ……本当に釣り上げたあああああああっ!?」


 おじさんが仰天のあまり地面に尻餅を突く中、ついに巨大サメを公園の上に落とすことに成功した。


「凄い暴れっぷりね!」


 巨大な身体が物凄い勢いで跳ねている。

 ぴちぴち、なんて可愛らしい擬音じゃなく、ずどんずどん、と公園全体が揺れるような地響きが巻き起こっていた。


 公園の土を施設カスタマイズで操作し、巨大サメを拘束しようとするも、その強烈な尾びれの一撃を喰らって、あっという間に粉砕されてしまう。

 ただの土じゃ抑え込むこともできないらしい。


「なんて硬い鱗だ……っ! 矢がまったく通らない!」

「アタシの拳も全然効いてないわぁっ!」


 フィリアさんとゴリちゃんが叫ぶ。

 って、ゴリちゃん、そんなに近づいたら危ないよ!


 バチィンッ!!


「いやあああああんっ!」


 言わんこっちゃない。

 ゴリちゃんが吹き飛ばされ、海に落下していった。

 影武者に回収してもらおう。


 ゴリちゃんですら接近したら一溜りもないのだから、誰も近づいて攻撃することなど不可能だろう。


「だったら凍らせてやるわ!」


 セレンが魔法で巨大サメを凍り付かせようとするけれど、あの大きさではどれだけかかることか。


「このまま弱るのを待つしかないか……でも、釣竿がギシギシ軋んでるし、下手したらそのうち壊されるかも……」


 巨大サメが弱るのが先か、釣竿が壊れるのが先か。

 釣り針の方も心配だ。


「あ、そうか。冷蔵倉庫も使って凍らせちゃえば……」


 クラーケンを保管しているのとは別に、巨大な冷蔵倉庫を作成し、サメを釣竿で引き摺ってその中へと放り込む。

 そして限界まで温度を下げていった。


 なんと氷点下50度。

 海の中じゃ絶対にあり得ない気温だ。


 最初は冷蔵倉庫が壊されそうなくらい暴れていた巨大サメだけれど、見る見るうちに動きが鈍くなっていく。

 やがてカチカチに凍り付いてしまったのだった。



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