第262話 もちろん余も遊ぶぞ
「うむ、あの遊園地とやらだが……大変素晴らしいものであるな」
王都に遊園地を作ってみたら、王様からめちゃくちゃ喜ばれた。
今までこの国に遊園地なんてものは存在していなかったし、娯楽のためだけの巨大施設なんて、さすがに受け入れてもらえないかもと心配したのだけれど、どうやら奇遇だったみたいだ。
まぁ王様というより、ダリネア王女が喜んでくれたからかもしれない。
「ぜひとも近いうちに開園させたいと思っておる。きっと国民も喜ぶだろう(もちろん余も遊ぶぞ~~っ!)」
運営は鉄道と同じく国に任せるつもりだ。
建設費がゼロなので、なかなか美味しい事業だよね。
そのせいか、タリスター公爵から、ぜひうちにも作ってほしいと懇願されてしまう。
「どうかあれをぜひ我が領地にも!(そうすれば毎日のように遊び放題じゃ~~っ!)」
凄まじい熱意だ。
きっと遊園地経営による経済効果を期待してのことだろう。
「わ、分かりました。作りましょう」
「本当か!? ありがたいのじゃ!」
その後、噂はさらに大きく広がったようで、各地の有力諸侯からも建設を頼まれ、気づけば王国のあちこちに遊園地を作ることになってしまった。
「せっかくだし、それぞれコンセプトを変えてみようかな」
なんとかシーみたいに海をテーマにしてみたり、植物をテーマにしてみたり、食や温泉をテーマにした遊園地もいいかも。
遊園地ごとに特徴が違えば、一か所行くと他の遊園地にも行ってみたいってなるだろう。
人の移動が盛んになると、経済的にも盛り上がるからね。
幸い鉄道を王国中に敷いたお陰で、遠方にも気軽に生きやすくなっている。
それに今まで各諸侯が互いに争っていたのは、領地を越えた移動が少なかったことも原因の一つだ。
だけど人の移動が増え、領民同士の交流が頻繁になれば、必然的に争いは忌避されるようになるだろう。
「というわけで、影武者たちよろしくね(丸投げ)」
影武者は本当に便利だなぁ。
あれから数も増えて、今では五十体ほどが王国各地で動いてくれている。
とはいえ、幾ら影武者が多くても、すべての遊園地をまったくのゼロから一つずつ作っていくのは大変だ。
そこで王都に作ったオーソドックスな形をベースにして、それを施設カスタマイズで調整したりしていくことに。
そこで役立ったのが、レベルアップで新しく習得したスキル「コピー&ペースト」だ。
これはすでに設置済みの施設をコピーし、そっくりそのまま同じものを別の場所にペーストさせることが可能になるというもの。
カスタマイズした後の施設を、簡単に増築できる点が非常にありがたい。
コピーできるのは単独の施設だけではない。
区画を丸ごとコピーして貼り付けることもでき、何なら荒野の村とまったく同じものをもう一つ隣に作り出すことだって可能だ。
しかも一人の影武者がコピーし、遠く離れた別の影武者がペーストする、なんて真似もできたりする。
これを利用すれば、かなり作業効率が良くなるだろう。
「ポイントはコピー元を作ったのと同じだけ必要だけど……。まぁ低ポイントでコピペできちゃったら、もうポイント制自体が意味なくなるしね」
もちろん遊園地は荒野の村にも作った。
そのコンセプトは、僕の記憶の中にあるとある遊園地だ。
「なんだか不思議なところね?」
あまり見たことのない形や色合いをした建物や遊具に、セレンが首を傾げている。
「あの巨大な筒状のものは何かしら?」
「あれはスペースシャトルだよ」
「スペースシャトル……?」
「宇宙に行くためのロケットだね」
「ウチュウ? ロケット?」
「夜になると空に月とか星とかが見えるでしょ? あの月や星のある場所のことだよ」
「……全然分からないわ」
そう。
この遊園地のテーマは「宇宙」だ。
ただ、残念ながらこの世界の人たちには不評で、後々、リニューアルオープンするため、閉園することになってしまうのだった。
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