第205話 まるで生きてるみたい
「な……?」
突如として背後に現れた気配に驚くワイト。
さすがにこの一瞬で先ほどの魔法を使えはしないようで、
「滅せよ!」
「~~~~~~っ!?」
ガイさんが振り下ろした棍が、ワイトの頭蓋に直撃する。
同時に炸裂した光で、ワイトの骨がどろりと溶けた。
「があああっ……余がっ……」
それでもまだ生きている(死んでるけど)。
すかさずガイさんが追撃しようとするも、ワイトの身体が地面に呑み込まれていった。
そして少し離れた場所から出てくる。
どうやら影から影へと移動しているらしい。
「逃がさないよ」
「っ!?」
こっちは瞬間移動でそれを追いかけた。
再びガイさんの棍を浴びて、ワイトが大いに苦しみ始める。
「バカな……こんなはずは……」
「過去の亡霊よ、大人しく成仏されよ!」
「がああああああっ!?」
もはや反撃も逃走もできなくなったワイトへ、ガイさんがトドメを刺す。
やがてワイトの骨がボロボロと崩れていき、そのまま灰となってしまった。
「……南無」
ガイさんが手刀を切る中、まだ残っていたデュラハンたちもワイトが浄化されたためか、次々そその姿を消していく。
気が付くとすべてのアンデッドがいなくなっていた。
「やったか?」
「セリウスくん! それフラグ!」
「……フラグ?」
でもさすがに本当にやったみたいで、しばらく経っても何も起こらなかった。
「だけど、あれでよかったのかしら? 向こうからしたらこっちはただの墓荒らしだけど」
「はっ、アンデッドと化してまで生前の財産を守ろうとするような強欲な王だ。何の罪悪感もねぇな」
ともかく報告のために地上に戻ろう。
僕は近くの壁に穴を開けて、そこから地上へと続く直通の階段を作ることにした。
「「「……」」」
みんなから何か言いたそうな顔をされたけれど、気にせず階段を上っていく。
「あ、ちょっとだけ寄り道してもいいかな? 調べておきたいところがあるんだけど」
「どういうことよ?」
僕は階段の途中で横道を作り、それを遺跡内へと繋げた。
「不思議な部屋を見つけたんだ。正規のルートからは外れていたみたいなんだけど」
だから行きのときにはひとまずスルーしたのだけど、帰り道でちょうど近くを通りそうだったので、寄り道してみたのである。
「ここだね」
横道から繋がるその部屋へと足を踏み入れた。
先ほどの最下層の部屋と比べると、三分の一以下の広さだ。
棺が置かれているわけではなく、ただ殺風景な四角い空間。
だけどその中央に、一本の柱が立っていて、
「え? 人?」
柱に人が括り付けられていた。
女性だ。
二十代半ばくらいだろうか、夕暮れ時の空のような色をした長い髪が特徴的で、意識がないのか静かに目を瞑っている。
よく見ると整った顔立ちの美人で、露出の多い衣服とすらりと長い身体は随分と煽情的なものだ。
「ふむ、これは素晴らしい大きさ……」
「……挟まれたい……」
「ちょっと、あんたたち?」
ガイさんとディルさんの二人がその豊満な胸を評して、ハゼナさんに睨まれている。
ガイさんは僧兵なのに女好きだと聞いてはいたけど……。
そしてディルさん、この遺跡に潜ってから初めて喋った気がする。
「何だ、この女は? 死んでんのか?」
「それにしては随分と綺麗な状態ですね……それにこの鎖……」
女性は鎖で手足を縛られているようだった。
セレンがじっとそれを見つめ、
「息はしていないみたいね。でも……まるで生きてるみたい」
肌には赤みがあって、今まで遭遇してきたアンデッドとは明らかに違う。
だけど時が止まってしまったかのように、微動だにしない。
一体いつからこの状態なのだろうか。
もしこの遺跡ができた古代からだとしたら、彼女はその時代の人間ということになるけど……。
「ふん、斬り落としてやろう」
「ら、ラウル様、お気をつけてください!」
ラウルは近づいていくと、鎖を剣で斬りつけた。
バチンッ!
「なに?」
だけどその剣が弾かれてしまう。
「ちっ、なんて鎖だ。こいつは容易には斬れねぇぞ」
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