第384話 たぶん全然分かってないよね
ドナの工房には、大型巨人を倒したのとは別の機竜が鎮座していた。
「で、これは何?」
「禁止されていたのは機竜の量産。これは既成の機竜を大幅にパワーアップさせた新型機。つまり量産ではない。だから禁止されてはいなかった。もう一つ言うとこの新型機を量産するつもりはない」
ドナはそう早口でまくし立てた。
明らかに目が泳いでいて、自分でも苦しい言い訳だと理解しているようだ。
「量産もダメだけど、新型機もダメだよ。しかもパワーアップさせるとか。元の機竜ですら、あの大型の巨人をあっさり撃破できるくらい、危険な兵器なのに」
「……どうしても?」
潤んだ目で見上げてくるドナ。
「そんな捨てられた犬のような目をしてもダメだから」
「……」
ドナはしょんぼりと肩を落としてしまった。
『兵器職人』のギフトを持つ彼女には、確かに厳しい措置かもしれない。
ただ、現状でもすでにこの村の持つ軍事力は、軽く一国のそれを上回るレベルに到達してしまっているのだ。
さすがにこれ以上やると、友好的な国々ですら、この村のことを脅威に思うようになってしまうだろう。
「分かった。じゃあ、機竜はもう作らない」
「うんうん、分かってくれたらいいんだよ」
「機竜を超える別の兵器を作る」
「たぶん全然分かってないよね!?」
「え? この村の力を貸してほしい?」
その日、とある冒険者たちから打診を受けた。
「はい。実は我々、少し前からローダ王国で活動しているのですが、とある街が植物系の魔物によって完全に呑み込まれるという事件が起こりまして。冒険者たちはもちろん、騎士団も手が出せず、現地の人々は眠れない夜を過ごされているのです」
実は彼らは、この村で結成された冒険者パーティなのだという。
しかし最近、冒険者の活動を通して困っている人たちを助けたいと、新天地を求めて村を出たばかりらしい。
……最近、同じようなことが多すぎない!?
「たとえ報酬が少なくとも、人々のためになることをしたいと思ったのです」
「へ~、そうなんだー」
「(本当は冒険者パーティと見せかけた、伝道師の一団ですけどね! 困っている人たちを助け、感謝されたところで、すべてはルーク様のお陰だと説くのです! そうしてどんどん信者を増やしていく! それこそが、聖母ミリア様の作戦!)」
うーん、何だろう……。
この一連の出来事、何か裏がありそうで怖い感じが……。
すでにローダ王国側とは話を付けてあるそうだ。
ローダはすでに村の領域内になっているので、瞬間移動を使えば目的地の都市まですぐに行くことが可能である。
というわけで、リッチ討伐のときとほぼ同じメンバーたちを連れ、ローダ王国北部にあるその都市へ。
「……これは予想以上に呑み込まれてるね」
元々はそれなりの規模の街だったのだと思う。
でも今は建物が完全に見えなくなってしまうくらい、植物のツタで覆い尽くされているのだ。
「よく見るとツタがうねうね動いてるわね」
「うむ。しかもまだ成長を続けているのか、外に向かっているようだ」
セレンとフィリアさんがそのツタを観察している。
「街の中に立ち入ろうとすると、このツタが襲い掛かってくるのですが、このすべてが一体の植物系モンスターではないかと言われています」
今回、僕たちに協力を要請してきた元村人の冒険者、アニエさんが言う。
「おいおい、これが一体のモンスターだって? どんな大きさだ? 聞いたことねぇぞ」
アレクさんが唖然としている。
「けど、植物系は炎に弱いって相場が決まってるもの! あたしの炎で、焼き尽くしてあげるわ!」
「いや待て、ハゼナ。んなことしたら、街ごと燃えちまうだろうが」
「あっ。……じゃあ、どうすればいいっていうのよ?」
と、そのときだ。
いつものお騒がせサムライが叫んだ。
「拙者に任せるでござるよ! この程度のツタ、斬って斬って斬りまくればいいでござる! はああああああああっ!」
威勢よく生い茂るツタの中に飛び込んでいくアカネさん。
宣言通り猛烈な勢いでツタを斬り落としていく。
「ぎゃああああああああああっ!?」
あっ、戻ってきた。
よく見ると巨大な蜘蛛の魔物に追いかけられていた。
「拙者、虫は苦手でござるうううううううううううっ!!」
……また何の役にも立たなさそうだ。
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