第228話 約束だものね
武闘会はゴリちゃんの優勝で幕を閉じた。
最後の展開に納得がいっていない観客も多かったけれど、それでも大会全体を見れば大満足だったみたいで、ぜひまた開催してほしいとの声が殺到した。
「次はオレにも参加させろ」
ラウルのように村の住民以外も出場できるよう、規模の拡大を望む声もあった。
でも王国中を巻き込むとなると、さすがに王様の許可が必要だよね。
と思っていると、
「これほど面白いイベントだ。せっかくだから、ぜひ王国全土から出場者を募集するようにしてもらいたい」
……会場に来ていた王様から、あっさり承認が得られてしまった。
「それならいっそのこと王家が主催するとかどうですか? 場所の提供や運営なんかこちらでやりますから」
「それは良い考えだ。王家の力を示す絶好の機会になるだろう」
この国の中央集権化を進めようとしている王様にとっては好都合だったようで、すんなりと僕の提案に乗ってくれる。
「その代わり、優勝者の賞品だけはお願いします」
「うむ、それくらい容易いことだ」
……やった!
これで今回のように、優勝賞品のことで悩まされることはなくなるはずだ。
「(しかしこの村、どう考えてもギフト持ちの数が多すぎるような……。教会に目を付けられたりしなければよいが……)」
「どうしました?」
「いや、何でもない。では、そろそろわしらは王都に戻るとしよう。四日も不在にして、政務が溜まっているだろうからな」
「まだ帰りたくありませんの!」と王女様が少し駄々をこねたりはしたけれど、王様一行はその日のうちに電車で帰っていった。
「うふふ、それじゃあ村長ちゃんには、早速アタシのお願いを聞いてもらおうかしらぁ♡」
残念ながら今回の優勝賞品については、約束していた通り(僕はしてないけど)に提供するしかない。
優勝したゴリちゃんに連れてこられたのは、彼女の美容院だ。
普段は他のマッチョ店員や女性客で賑わっているここだけれど、今はゴリちゃんと僕の二人だけしかいなかった。
一体僕はこれから何をされるのだろう。
まだ何も聞かされてはいないけれど、ゴリちゃんの舐めるような視線が怖すぎる。
というか、こんなときこそ影武者に入れ替わっておけばよかったよ!
「ハァハァ……約束だものね、村長ちゃん……どんなお願いだって叶えてくれるんでしょう……?」
ゴリちゃんが鼻息荒く迫ってくる。
僕は思わず後退った。
「アナタの初めて……アタシにちょうだぁぁぁぁいっ!」
「ひいいいいいいいいいいいいいっ!」
――一時間後。
僕はなぜか鏡の前に立っていた。
そこに映っているのは、間違いなく僕のはずだ。
なのにどう見たって僕じゃない。
鏡の向こうにいたのは、可愛らしくお洒落をした美少女だった。
「うふふ、どうかしら村長ちゃん? 初めての
ぬっと巨大な影が現れ、うっとりした顔で聞いてくる。
「ええと……この子、誰?」
「誰って、村長ちゃんに決まってるわよぉっ! でもそう思っちゃうのも無理はないわぁ! だって、完全に別人だもの!」
ゴリちゃんは腰をくねらせ、興奮したように言う。
「はぁぁぁぁんっ! それにしても本当に可愛いわぁ! やっぱりアタシが思っていた通り! 村長ちゃんを女装させたらすっっっごい美少女になるはずって、最初に見たときから思ってたのよぉっ!」
……ゴリちゃんが優勝賞品として僕にお願いしてきたのは、僕のお尻の穴……じゃなくて、僕の女装だった。
化粧を施されてウィッグを被せられ、さらに女の子らしい服を着せられて。
そうして気づけば、こんな姿になっていたのである。
「せっかくだから、村のみんなに見てもらうわよぉん!」
「ちょっ、それは恥ずかしいからやめて!?」
「何でよぉっ! こんなに可愛くなったんだから、堂々と見せればいいじゃないのぉっ!」
全力で拒否した僕だったけれど、ゴリちゃんに抱え上げられてしまった。
その怪力から逃れることなど誰にもできはしない。
「ああん! そうやって恥じらってるところなんて、もう完全に女の子にしか見えないわぁぁぁっ!」
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