第392話 なぜか寒気が
「何でみんな立候補しないんだろう。もしかして王政の国ばかりで、議会っていうものに馴染みがないのかも?」
「それもあるかと思いますが、最大の理由は今の村に不満がないことでしょう」
僕の疑問に対し、ミリアが教えてくれる。
「ルーク様が思う以上に満足されているのです」
「うーん、それは良いことかもしれないけど……」
とはいえ、今後のことを考えても、議会は必要だろう。
……もう村議事堂も作っちゃったし。
「では、わたくしが呼びかけてみましょうか」
「ミリアが?」
「はい。これでも村の神官ですし、人を教え導くのは得意です。それに誰が議員に相応しい高い倫理観と公平性を持つ村人なのか、よく分かっていますから」
大きな胸を力強く叩くミリア。
「あれ、まともなこと言ってるはずなのに、なぜか寒気が……」
「気のせいですよ」
「じゃあ、お願いしようかな」
「ぜひお任せください(議員をわたくしの息のかかった信者で固めるチャンスです……っ!)」
「……本当に大丈夫かな」
その後、ミリアの呼びかけもあって、五十人ほどの立候補者が集まった。
これから選挙を行い、三十人の議員を決める予定だ。
「ふと思ったんだけど、村長も選挙で決めた方がいいんじゃ……?」
「それもでも構いませんが、結果は決まっているかと思います。仮にルーク様以外が立候補したとしても、大差で敗北するでしょうから。もちろん、選挙によって選ばれたという体裁を得るために、あえて行うというのもありでしょうが」
……とりあえず村長選については置いておこう。
議会の設置と並行する形で、行政機関についても整理することにした。
一応、今まではざっくりと各分野の担当を決めていて、
他の都市や領地などとの外交に関すること……ダントさん。
村人たちの生活に関すること……ベルリットさん。
村の産業や商業に関すること……ブルックリさん。
村の治安維持や周辺警備に関すること……サテン。
という感じになってはいたけど、組織構成をちゃんとさせたのだ。
そして作ったのは以下の七つの部局。
【自治法務部】村独自の条例の整備や維持、牢屋や更生施設の管理などを行う部局。
【外務部】セルティア王家や諸侯、他国との外交を担当する部局。
【環境生活部】村内の土地の活用や整備、村が提供している住居や公共施設の運営や管理など、村人たちの生活に関する部局。大聖堂についてもここの管轄。
【経済産業部】村の産業や商業について監督する部局。エルフやドワーフたちの工房・工場もここの管轄。
【食料農畜産部】農業や畜産業、飲食店など、村の食に関して監督する部局。
【安全防衛部】村の治安維持や周辺警備に関する部局。冒険者ギルドもここの管轄。
【医療福祉部】村の医療や福祉、学校教育などについて監督する部局。
それぞれの部局には部局長を置いた。
【外務部】はダントさん、【環境生活部】はベルリットさん、【経済産業部】はブルックリさん、【安全防衛部】はサテンという形で、引き続き以前と同様の分野を担当してもらった。
残りの三部局については、それに相応しい人材にお願いして、部局長を務めてもらうことに。
【自治法務部】は以前、王都で裁判官をしていたというウセルハトさん。
【食料農畜産部】は『達人農家』のギフトを持つテオール、のお父さんのオルテアさん。
【医療福祉部】は『癒し手』のギフトを持つエルフのクリネさん、のお姉さんのコルネさん。
宮殿内の各フロアに部局の拠点を置いた。
相応の数の職員も雇って、部局長をしっかりサポートしてもらう。
ちなみに以前から宮殿では、公務員的な感じで職員を雇ってはいたものの、部署など存在していなかったので、その時々に空いている人に仕事をやってもらっていた。
今回、彼らを各部局に割り振りつつ、さらに新しく人員を増やした形だ。
「てか、募集人数の五十倍くらいの応募があったんだけど……議員の立候補は全然いなかったのに……」
「この宮殿で働くのは村人たちの夢ですから。当然、殺到しますよ」
わざわざ村議事堂を作らずに、宮殿内に議事堂を設けたらよかったのかも……。
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『昔取ったきねづかで…と言いながら無双する定食屋のおっさん、実は伝説のダンジョン攻略者』
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