第391話 信徒も順調に増えていますし

 高速鉄道は国境を越えて走る鉄道だ。

 そのため運営をどこの国に任せるのか、本来なら非常に難しい問題になる。


「村が運営するって言ったら、簡単にOKされちゃった……。良いのかな?」

「それだけルーク様が信頼されているということでしょう」


 断言するのはミリアだ。

 なお、国内の鉄道に関しては、各国の政府に運営を任せる形だ。


「だけど高速鉄道のせいで、ますます簡単に人が来れるようになってしまった……」

「素晴らしいことです(信徒も順調に増えていますし。そしてまた近いうちに千人規模の伝道師を派遣する予定ですよ……ふふふふ……)」

「ミリア?」


 村の住民や滞在者が増えたことで、最近ちょっと食料問題が発生しつつあった。

 畑での生産が追い付かなくなってきたのだ。


「でも、今回のレベルアップで、ちょうど良さそうな施設が増えたからね」


〈大規模農場:大規模な農地。作物の成長速度および品質大幅アップ。農業機械付き〉


 それは大規模農場だ。

 5000ポイントも要求される施設だけれど、きっとこれである程度は食料難が解決できるだろう。


 さらに今回、作成できる施設の中に闘技場が加わっていた。


〈闘技場:闘技のための施設。即死防止機能。魔物召喚機能〉


 以前、村で武闘会を開催したときは、訓練場をカスタマイズすることで無理やり作ったのだけれど、どうやらもうあんな面倒なことはしなくていいらしい。

 かなり大変だったからね……。


 正直あまりいい思い出がないこともあって、あれ以来まったく利用することなく、村の端っこに放置したままだった旧闘技場を消去。

 新たにこの闘技場を作ることにした。


「前々から需要はあったからね。またあんな感じで、村人同士が戦う様子を見たいっていうさ。村の戦士たち全員が出るような大規模な大会じゃなくても、定期的にそういった興行を開催していこうかな」


 しかも魔物召喚機能とやらを使えば、魔物を出現させることが可能らしい。

 人間対魔物の試合もできるということだ。


 魔物を召喚するためには、ポイントが必要になるという。

 ポイントを多く使えば使うほど、より強力な魔物を召喚できるようだ。


「どんな魔物が現れるかはランダムか。即死防止機能もあるし、万一のときも安心だね」


 そして今回のレベルアップで新しく作成できるようになった施設の、最後の一つはというと。


〈村議事堂:村議会のための施設。民意を適切に反映し、より良い村を作りましょう!〉


 この村は現在、セルティアの王様から自治権を認められている。

 だけど自治というには、色んなところがあまりにも適当なままだ。


 なにせ村長である僕が全権限を持っているというのに、政治に関して完全な素人である。

 みんなのサポートもあって、ここまで村を発展させることはできたけど、正直これほどの規模となってしまった村を、上手く統治していける気がしない。


「議会を作ろう」


 そんなわけで、新たに村議会を作ることにした。

 村人たちの意見をしっかり反映した、村行政にしていくためだ。


「議員定数は三十人くらいかな? さすがに誰でも簡単になれちゃうと困るから、最低でも一年以上の居住実績は必要だよね。あと年齢制限も設けて……選出方法はやっぱり選挙かな? まずはみんなに周知して、立候補してもらおう」


 そして立候補者を募ったところ、


「えっ、立候補者三人!? 全然いないじゃん! 定数三十人だよ!?」


 なぜか立候補がたったの三人しか現れなかった。

 過疎化した田舎でももう少し多いと思うよ……。


 ちなみにその三人は、ガイさんとネマおばあちゃん、そしてマンタさんだった。


「(若い女子は皆、しっかり肌を露出しなければならないという条例を作りたい。さすればこの村は桃源郷に)」

「(最近はどいつもこいつも根性が無くてつまらないからねぇ。もっと調教しがいのある連中を連れてきてもらいたいよ)」

「(村の美人は全員、俺の彼女にならなければならないという条例を作ればいいんだ! そうすれば非モテ人生と永遠にオサラバできる! ははっ、俺ってマジで頭いい!)」


 うーん、何だろう。

 この三人は議員にしちゃダメな気がする。


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