第19話 綺麗な奥さんが二人
村人が173人になって、随分と村に活気に満ちてきた。
僕とミリアの二人だけだった頃が懐かしい。
男女の人口比は大よそ一対二。
加えて若者の割合も高いので、なんというか、村全体が華やかで若々しい。
若い女性が多いせいだ。
「ルーク村長、おはようございますわ。ふふ、今日もかわいらしいですね」
「あら、村長。いつもお肌がぷるぷるですね。本当に羨ましいです」
「ルーク村長は間違いなく世界一かわいい村長だと思いますよ」
……特に若いお姉さん方から、そんな風に揶揄われている。
僕に村長としての威厳なんてないのは自分でも分かっているけれど……。
ちなみに二十歳を過ぎた女性はだいたい既婚者だ。
ただ、旦那が強制徴兵されてしまった人が多い。
しかも幼い子供を抱えていたりして、きっと色んな不安を抱えていることだろう。
そんな彼女たちが楽しそうに僕を揶揄ってくるのだから、なんだか怒れないんだよね。
まぁ、それがなくても僕は年上の女性が苦手なので、何も言えないと思うけれど。
未だにミリアとセレンの二人に挟まれて寝ているし……。
「それにしても綺麗な奥さんが二人、村長は羨ましいなぁ」
「ほんと。あの歳ですでに二人も娶っているとは、さすがは村長だ」
「可愛い見た目して、意外と下の方は強いんだろうな、はっはっは!」
ちなみにいつの間にか村人たちから、ミリアとセレンが僕の妻だと認識されていた。
確かに同じ家に住んでるから、そう思われるのも仕方ないけど……。
なぜかミリアとセレンはそれを耳にしても否定しない。
お陰で僕が「奥さんじゃないです!」って主張しても、「顔真っ赤にしてかわいい」「思春期ねぇ」なんて言われるだけで、全然取り合ってもらえないのだ。
「はぁっ!」
「ふっ!」
ガンガンガン!
ギンギンギン!
村の中心に設けた広場に、二人の男たちの鋭い声と激しい金属音が鳴り響いている。
バルラットさんたちが剣の稽古をしているのだ。
祝福で『剣技』のギフトを授かったのは、バルラットさんだけじゃなかった。
新しく加わった76人の中にも、『剣技』のギフトを授かった人がいたのだ。
二十六歳のペルンさんで、よくバルラットさんと一緒に稽古をしている。
今まで剣を習ったことなんてなかったはずなのに、二人はどんどん上達し、今では動きがほとんど目で追い切れなくなっていた。
やっぱりギフトの力は大きい。
ギフトを持たない人間がどんなに努力をしたところで、その差を覆すのは不可能と言われている理由が分かった。
……父上の『剣聖技』を受け継ぐことが、あれだけ望まれていたことも。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……」
やがて打ち合いをやめ、荒い呼吸で睨み合うバラットさんたち。
そしてどちらからともなく、構えを解いて剣を下ろす。
稽古を見ていた村人たちから、パチパチパチと拍手が上がった。
「すげぇや!」
「あれがギフトの力か……とんでもないな……」
「とーちゃん、かっこいい!」
「うちのパパだって負けてないもん!」
その中には二人の子供たちもいる。
バルラットさんのところには男の子が二人いて、ペルンさんには女の子が一人いる。
まだ幼いので祝福は受けられないけど、実はこの三人とも運よく『剣技』のギフトを引き継いでいた。
将来が楽しみだ。
「だいぶ良くなってきたわね。二人には、今後の狩りの主力として頑張ってもらうわ」
「「はい、師匠!」」
と、そんな二人を上から目線で評したのは、セレンである。
『二刀流』のギフト持ちであり、幼い頃から剣の訓練をしてきた彼女が、二人を指導しているのだった。
でも師匠って……。
十五歳のセレンが、ずっと年上の二人からそんな風に呼ばれているのは、なんだか不思議な感じだ。
なお、新しく加わった76人にも村人鑑定を使って、なんと12人も潜在的なギフト持ちがいることが判明している。
そのうち子供は二人だったので、十人が新たにギフトを授かっていた。
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