第18話 ギフトを授け放題ですね

 僕は村を囲っていた土塀を移動させていく。

 足りなくなった部分は、新たな土塀を作成して補った。


 さらに長屋、それから井戸を増やす。

 これで新しい村人たちの住居もばっちりだ。


 まだポイントは余っている。

 僕はガイドに勧められた通り、150ポイントを使って教会を作成することにした。


〈村ポイントを150消費し、教会を作成します〉


 できあがったのは、こじんまりした小さな教会だった。

 と言っても、この村にはぴったりの大きさかもしれない。


「ルーク様、これはもしや……」

「教会だよ、ミリア」

「……何でしょう。何となくですが、この教会で祈りを捧げるべきだという気がしてきました」


 何かに導かれるように、ミリアが教会へと入っていく。

 僕も彼女の後に続いた。


 中は礼拝堂があるだけだった。

 奥に祭壇のようなものが置かれていて、ミリアがその前に跪いて祈りを捧げている。


 神聖な空気の中、しばらく固唾を飲んで見守っていると、やがてミリアがゆっくりと顔を上げた。


「ルーク様、授かることができました。ギフト『神託』を」

「やった!」


 思わず感嘆の声を上げると、それが静寂に満ちた礼拝堂内に反響する。


「これがあればギフトを授け放題ですね」

「早速、潜在者を呼んで……あっ、でも少し休んだ方がいいよね?」

「いえ、構いません。ぜひ今すぐ呼んできてください。善は急げです」


 新しく加わった70人強はまだ村人鑑定していないから分からないけれど、分かっているだけで潜在的なギフト持ちは、現在この村に13人いる。


 そのうち5人はまだ成人前なので、残り7人を教会へと連れてきた。

 ちなみに成人前にギフトを授けてはいけないとされているのは、子供には身体への負担が大きいかららしい。


「村長? これは一体……?」


 バルラットさんをはじめ、不思議そうにしている彼らへ、僕は事情を説明する。


「な、何と、この私がギフトを……っ?」

「ギフトというのは、一部の高貴な方しか授かることができないのでは……? 私など、代々ただの農民で……」


 僕は彼らのその間違った知識を否定する。


「そうじゃありません。確かに、家系的にギフトを授かりやすい人たちもいます。ですが、身分に関係なく、ギフトを与えられる人には与えられるんです」

「「「……」」」


 半信半疑といった様子だ。


 まぁ言葉で信じさせるより、実際にやってみた方が早いだろう。

 そうして、ミリアが一人一人を祝福していく。


「バルラット。あなたには『剣技』のギフトが与えられました」

「な……何だ、この感覚は……? まるで、何かが身体の中に入ってきたような……」


バルラット

 年齢:32歳

 愛村心:高

 適正職業:戦士

 ギフト:剣技


 村人鑑定で確認してみると、カッコが取れている。

 どうやらちゃんとギフトを授かったみたいだ。


「バルラットさん、この剣、使ってください」

「村長? いいのですか?」

「はい。ギフト持ちのバルラットに使っていただいた方が、きっと有効に活用できると思いますので」


 この村は、まだ剣を作れるような環境にない。

 セレンの持つ二本の剣以外にあるのは、僕が持ってきたものだけだ。


「これは……今までロクに剣など握ったことがないというのに、やけに手に馴染むような……」


 剣を受け取ると、バルラットさんは不思議そうに言う。


「ありがとうございます、村長。もう良い歳ではありますが、今からでもこの村を護れるくらいに強くなってみせましょう」


 バルラットさんはそう力強く誓った。


 他に、前回紹介した『調合理解』『迷宮探索』『文才』に加えて、『達人農家』『緑魔法』『槍技』といったギフトをそれぞれ授かっていった。


『達人農家』は初めて聞いたギフトだ。

 言葉の通りに考えたら、農業におけるギフトだと思うけど……。

 すでに畑仕事を割り振っていた二十歳の青年なので、引き続き畑で頑張ってもらうとしよう。


『緑魔法』は風や天候に関する魔法の才能だ。

 高位の使い手になると、自在に雨を降らすこともできるようになるという。

 ……農業にも役立つかも?


『槍技』は『剣技』の槍バージョン。

 授かったのはまだ十五歳の少年なので、これから村の衛兵として、あるいは狩りなどでの活躍が大いに期待される。

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