第371話 もしかしてそこに落ちてる

 帝国の暴走の元凶であるゼルス大臣。

 いったん村へと連行し、牢屋に入れていたところ、


「ルーク様、私は今まで本当に強欲で罪深き人間でした。私の醜い人間性のせいで犠牲になったすべての方々へ、心からお詫びいたします」


 ……いつの間にか中身が別人になっていた。

 どうやら勝手におばあちゃんが更生させてしまったらしい。


「更生し甲斐がありそうな男がいるなと思って、つい、ねぇ。いっひっひっひ」


 このゼルス大臣は、各国の協議によって、一時は最大の戦犯として処刑されることになっていた。

 だけどそれから執行日が定められず、今のところずっと保留状態になっている。


 彼が心を入れ替えたことも無関係ではないと思うけれど……さすがにそれだけで処刑を許されることはないはず。


「『豪運』というギフトのお陰かな?」

「いつでも処刑される覚悟はできております。しかしその日が来るまでは、ルーク様と世界平和のために、この身を捧げていくことをお誓いいたします」


 ん、今、「ルーク様と」世界平和って言わなかった?

 気のせいかな……?


 そして帝国の巨人兵は、すべて村が預かることとなった。

 帝国が所持し続けることを各国が嫌ったものの、かといってそれぞれの国に分配すると今後の火種に繋がりかねない。


 貴重な遺物を破壊するわけにもいかず、そこでこの村がひとまず管理することになったのである。

 もちろん村が暴走する可能性も危惧されたけれど、そもそも巨人兵を一から製造できるのだから一緒だろうと判断されたらしい。


 あの機竜もこの村で保管することになった。


「それにしても大きいなぁ……」


 村の上空に飛ぶ公園。

 そこでドナたちドワーフが、機竜の動作検証を行っている様子を見ながら、僕は思わず呟く。


 巨人兵のときと同様、彼らはこの機竜の仕組みを解析しようとしているのだ。


 と、そのとき。

 空からこの機竜と大差ない巨体が降ってきた。


 あれ?

 何か口に咥えてるような……。


「何じゃこれはあああああああああああああっ!?」


 その巨体は小さな幼女へと姿を変えながら絶叫した。

 魔境の山脈に住むドラゴンのドーラである。


「また村の料理を食べに来たの? これは機竜っていって、ドラゴンを模して造られた兵器だよ」

「おおお、おぬしら、こんなものまで造れるのか!?」

「違うよ。これは古い遺跡から発掘されたものらしいよ」


 身体を震えさせるドーラに、僕がそう言ったまさにそのタイミングで、ドナが呟いた。


「ん、だいたい分かった。たぶん、これも一から造れる。頑張れば何機でも」

「やっぱり造れるんじゃな!? しかも何機も……ガクガクブルブル」


 ……このドワーフたちのことだし、放っておくとこの危険な機竜を量産してしまって、村が世界を支配できるような軍事力を抱えてしまうことになりかねない。

 ちゃんとコントロールしないとダメだね、うん。


「それより、ドーラ。さっき口に何か咥えてなかった? あ、もしかしてそこに落ちてる……って、アカネさん!?」


 無造作に放り捨てられていたのは、山脈踏破に再挑戦していたはずのアカネさんだった。


「またわらわの巣の近くで見つけての。連れてきてやったのじゃ」


 どうやらまた失敗してしまったらしい。


「だ、大丈夫? あ、まだ意識があるっぽい」

「また、失敗してしまったで、ござる……」

「すぐに病院に連れていくから、じっとしててください」

「せ、切腹っ……いたすっ!」

「だからじっとしててって言ってるでしょ!」


 瀕死のくせに切腹を試みようとするアカネさんを怒鳴りつけてから、僕は大きく溜息を吐き出した。


「なんでまた失敗してるんだよ……面倒だから早く成功して……」

「手を煩わせてしまって、誠に申し訳ない……これはもはやお詫びに腹を切るしか!」

「それが面倒なんだけどさ!?」


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新作『神々に見捨てられし者、自力で最強へ』を少し前から連載中です。よかったらこちらも読んでみてください。

https://kakuyomu.jp/works/16818023214123731449

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