第162話 めちゃくちゃ壮大な謝罪だった
「大変申し訳ありませんでしたああああああああっ!」
いきなり僕の前でジャンピング土下座を決めるフレンコ子爵。
あれ、どこかで見たことあるよね、この光景。
「ええと、前回のドルツ子爵はともかく、フレンコ子爵が謝ってくる理由が分からないんですけど……」
「私ごときが偉そうに領主をしていたことを、すべての人々に心からお詫びしたいのだ!」
「めちゃくちゃ壮大な謝罪だった!」
相変わらず急激な改心ぶりが恐ろしい。
この村の更生施設があれば、世界は平和になるのでは……?
「過去の愚かな統治を反省し、これからはただただ領地と領民のために全力を尽くしていきたい! 無論、ドルツ子爵とは和解し、今後は友好的な関係を築きながら、共に領地を発展させていく所存だ! そうであろう、ドルツ子爵!」
「ああ! 今後は一緒に頑張っていこうではないか、フレンコ子爵!」
どうやら二人の関係も改善したようだ。
「それにしても、なぜ私はああまで貴殿のことを嫌っていたのか……今となっては理解に苦しむ。深く語り合ってみれば、私との共通点も多く、友好関係を築けそうな男だったというのに……」
「考えてみれば、儂らは同じ学校にも通う同級生だったにもかかわらず、相手のことを深く知ろうとすらしていなかったな」
「……むしろ私は貴殿に嫉妬していた」
「嫉妬?」
「武術の成績が優秀な貴殿に、私は一度たりとも勝つことができなかったからな。 それに、その男らしい容姿もあって、女子生徒からモテていた。正直、私には羨ましかったのだ」
「わ、儂が男らしいなんて……。そ、それを言うなら、学業において儂は貴殿に手も足も出なかっただろう。それにむしろわしの方こそ、貴殿のスマートな容姿を秘かに羨んでいたものだ」
「スマートな容姿……いや、しかし、やはり男ならば貴殿のような見た目の方が……もし私が女であったなら、間違いなく……」
「いやいや、儂が女であれば、貴殿のような男が……」
「……ドルツ子爵」
「フレンコ子爵……」
え、なに?
二人とも潤んだ瞳で、じっと見つめ合っちゃったりして……。
「と、とにかく……二人とも頑張ってください。何かあれば僕もできるだけ協力しますから」
すると二人そろって、なぜか再び土下座をしてきた。
「お願いだ!」
「ルーク様のお力で、我々の領地にもここのような素敵な街を作ってほしい!」
いきなり他力本願すぎない?
できるだけ協力するとは言ったけど……さっきの決意は何だったんだろう。
「いや、儂がどんなに頑張ったところで、この街を超える魅力ある領地を作ることなど、どう考えても不可能だ。それは実際に住んでみて嫌と言うほど理解できた。領民が出ていくのも当然で、近いうちに人がいなくなってしまうだろう」
「それは我がフレンコ領においても同様だ。しかし噂では、ルーク様はアルベイル領の北郡にもここに匹敵する新たな街を作ってしまったと聞く。もし我らの領内にも同様の街があれば、どうにか領民の流出を防ぐことができるだろう」
新しい街を作ったというより、作り替えたって言った方が正しいけどね。
「「むしろルーク様の領地にしてもらっても構わぬくらいだ」」
「本当にさっきの決意は何だったの!?」
「結果的に領地が良くなるならば、領主の座など惜しくもない」
「ドルツ子爵の言う通りだ」
二人とも完全に無私の領域に到達してしまっている……。
「それは僕が困るので遠慮します……」
いきなり二つの領地を統治する領主になんてなったら、さすがに父上も黙っていないだろう。
アルベイル領の北郡のことだって、秘密裏にやったことだし。
「でも、街を作り替えたりするくらいならいいですよ。ただ、条件がありますけど」
「「条件、とは……?」」
「一つはお二人の領地を村の一部に組み込ませてもらうこと。それから領民たちを村人として登録させてもらうことです。と言っても、どちらもあくまでギフト上のことなので、表面上は何も変わりませんが」
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