第167話 エレベーターも付いてる

 家屋・大をグレードアップし、宮殿にした。


 僕の想定としては、元の三倍ほどで確保したスペースまでで拡大が止まり、せいぜい男爵家や代官が住むくらいの規模になるはずだった。


 だけど高く高く伸びていき、気づけば高層ビルのように天高く聳え立つ巨大な宮殿となってしまった。

 たぶん高さ百メートルほど、階数で言うと三十階建てくらいはあるだろう。


「あれ……これもしかして、アルベイルのお城よりも大きいんじゃ……」


 敷地面積こそ大きく劣るものの、高さは遥かに凌駕している。

 横に広いより高さがあるほど大きく見えることもあって、アルベイル城よりも立派に見えてしまう。


 しかも外壁が白く輝いていたり、見事な装飾が随所に施されていたりと、外観の美しさはアルベイル城の比じゃない。

 まぁ、あれはそもそも防衛力を重視して作られた武骨なお城だけれど。


 ていうか、下手すると王宮よりも……う、うん、考えないようにしよう。


「さすがルーク様です! 王宮に勝るとも劣らない素晴らしいお城ですよ!」


 言わないで!

 せっかく考えないようにしたんだから!


「どうせなら周辺も広い庭園にしちゃわない? それに城壁も欲しいわね。中がどうなってるか分からないけど、このままだと防衛面で少し難がありそうだもの」

「そんなことしたら、ますます誤魔化せなくなっちゃうでしょ!」


 セレンの案を却下し、ひとまず中がどうなっているか確かめるため宮殿内へ。


 ちょっとした集会を開けそうなほどのエントランスが出迎えてくれた。

 一階と二階が吹き抜けになっていて、二つの巨大な階段がシンメトリーになって二階へと続いている。


「エレベーターも付いてるみたい」

「エレベーター? 何それ?」

「初めて聞きましたね」

「そっか、二人はまだ使ったことないんだっけ」


 もちろんこの世界にエレベーターなんてものはまだないけれど、村ではホテルやオフィスビル、病院なんにはすでにエレベーターが付いていた。


 これくらいの高層の建物だと、やっぱりエレベーターが必須だよね。


 各扉の脇に「←」と「→」のボタンがあった。

 一階に『→』があるってことは、この宮殿どうやら地下もあるらしい。


 ひとまず「←」のボタンを押してみると、すぐに扉が開く。


「自動で開いたわ!?」

「魔道具の類でしょうか」

「この箱の中に入ってボタンを押すと、行きたい階に連れて行ってくれるんだ」


 ボタンを確認してみると、地下一階から三十階まであった。

 これはすべてを見て回るだけでもかなり時間がかかりそうだ。







 宮殿内を探索した結果、大よその内部構造が分かった。


 下層は主に宿泊施設だ。

 どれも小さめの部屋なので、恐らく宮殿に務める役人や衛士などが泊まれるようになっているのだろう。


 中層はオフィスビルのようになっていて、どうやら文官たちの仕事場として使うことを想定しているらしい。

 上層には広めの部屋が幾つもあり、何かの集会を開いたり、あるいは領主であれば謁見の間として利用したりできそうだ。


 そして最上層は広々とした居住用の部屋で構成されていた。

 レストランにできそうな厨房付きのスペースもあって、領主や高官がここで生活できるようになっているのだろう。


 そんな中でも、最上階は高級ホテルのスイートルームもびっくりの部屋となっていた。

 一つの階を丸々使うという贅沢ぶりで、ここだけで広さは前の家屋・大に匹敵している。

 もちろん内装も華やかで、家具や調度品もいかにも高級なものばかり。


 空中庭園のようなルーフバルコニーには、プールや露天風呂まであった。

 何より僕たちを圧倒したのは、そこからの眺めだ。


「凄い! 村を一望できるわ!」

「これは素晴らしい展望ですね」


 現在この村で最も高い建物がこの宮殿なので、村全体を見下ろすことができた。

 地上を見てみると、突然現れたこの高層建築物を見上げながら、唖然と立ち尽くしている村人たちの姿があった。


「ええと……もしかして僕たち、今日からここで暮らすの?」

「もちろんそうでしょ?」

「他にいないかと」


 こんなの、もはや王様だ。

 僕、村長なんだけど……。


「王様に怒られたりしないよね?」

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