第28話 僕がやったんだ

 一度、現在この村にある施設について整理しておきたいと思う。


 まずは小屋と土蔵が一棟ずつ。

 それから僕とミリア、そしてセレンが寝泊まりしている家屋・小が一棟。


 村人たちが住む長屋が全部で十六棟。

 井戸が十七基。ちなみに各長屋に一基ずつに、僕たちの家屋の傍に一基という内訳だ。


 畑が三十面。

 土塀は確か、全部で十五塀分くらい作ったような。


 それから盗賊団を入れておくための牢屋が三棟。

 更生施設が一棟だ。

 なお、盗賊を嵌めたあの堀は、そこに土塁を作ることですでに埋め立ててある。


 物見櫓が村の四隅に一基ずつの、計四基。

 屋外調理場が一か所。

 焼却炉が一基。


 そして最後に教会が一堂だ。


「万一に備えて貯めてきたポイントに、ボーナスでさらに500村ポイント入手できた。さすがに貯金し過ぎても宝の持ち腐れだし、ここらで使っておこうかな?」


 あ、その前に新しく作れるようになった施設を確認しておこう。


〈レベル5になったことで、新たに作成可能になった施設は次の通りです〉


 道路(5) 水路(10) 物見塔(100) 公衆浴場(150) 家屋・大(200)


「道路が5ポイントで水路が10ポイント? ここにきて随分と少なくない?」


 と思ったけれど、どうやら一度の作成だと数メートル分にしかならないらしい。

 せいぜい5ポイントなので試しに作ってみたのだ。


 つまり幾つも作成し、繋げて行かなければならないということか。


 ただ、思っていた以上にしっかりした道路ができた。

 石畳なのだけれど、石と石の隙間がほとんどないし、しかも綺麗な平ら道だ。

 アルベイル領の領都と主要な街を結んでいる街道ですら、もっと凸凹していたのに。


 水路も石を奇麗に積んで作られた立派なものだった。

 これなら治水工事も簡単にできてしまうだろう。


 物見塔は物見櫓の上位版かな?


「公衆浴場か……要するにお風呂だよね? これがあったらみんな喜ぶかも」


 長屋にはお風呂が付いていない。

 僕の住んでいる家屋・小だけだ。


 だから村の人たちは井戸水を使い、身体を洗っていた。

 井戸水は冷たい。

 今は温かい季節だからいいけれど、冬になったらきっと身体を洗うのも一苦労だろう。


 色々考えた結果、僕はまず、村の防衛能力を上げるため、土塀をすべて石垣にグレードアップすることにした。

 今回、作戦が上手くいって盗賊団を倒すことができたけれど、土塀のままじゃやっぱり心許ないからね。


 差は30ポイントなので、十五塀分。

 つまりこれだけで一気に450ポイントも消費してしまった。


「な、何だ……っ!?」

「土塀が突然、動いたと思ったら……」

「石に代わっている!?」


 村を囲っていた高さ二メートルほどの土塀が、いきなり二メートル五十近い石垣に代わってしまったので、みんな何が起こったのかと慌てふためいている。


「あ、ごめん。僕がやったんだ」

「なるほど、村長でしたか」

「さすが村長。一瞬でこんな芸当をやってのけるとは」

「みんなちょっと納得が早過ぎない!?」


 僕の仕業だと知るや否や、あっさりと受け入れる村人たち。


 気を取り直して、僕は続いて家屋・小をグレードアップすることにした。

 村人たちがもっと狭い長屋に住んでいるのだからと思って、今まで小さいままにしておいたんだけれど、村人たちが口をそろえて「村長の家が小さ過ぎる」なんて言ってくるから……。


 家屋・大を作れるようになったけれど、とりあえず家屋・中から。

 50ポイントでグレードアップできた。


「わっ、二階建てになった!」


 中に入ってみると、一階はリビングとキッチンに加えて一部屋、二階には部屋が二つあった。

 家屋・小がワンルームだったことを思うと、随分と広い。


「……ベッドは一つだけか」


 家具も備え付けられていたけれど、生憎とベッドは二階に一つしかなかった。

 ただ、ダブルベッドなのか今までのより大きい。


 と、そこで僕はハッとする。


「もしかして施設カスタマイズを使えば、ベッドの数も増やせるんじゃ……?」


 これでいつものサンドイッチ状態から解放されるかもしれない。

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