第27話 強制的に村人にすることが可能です

「盗賊たちを村人に……?」


 さすがに今回ばかりはガイドのアドバイスが信じられなくて、僕は思わず聞き返した。


 これまで難民たちを村人にしてきたけれど、それとは訳が違う。

 色んな違法行為に手を染めてきた盗賊なんて、村人にしてしまうのは危険だろう。


〈村人というのは、あくまでギフト上のものです。他の村人と同じ待遇で扱うことを勧めているわけではありません〉

「あ、なるほど」

〈村人にした上で、更生施設に入れてください。そうすればいずれ更生されます〉


 更生施設……?

 そう言えば、そんなものを作成できたっけ。


〈もちろん、罪の重い者についてはすぐに処刑してしまってもよいでしょう〉


 ガイドはそう言うけれど、そもそもこんな小さな村だ。

 罪に応じて全員をきちんと裁くなんて真似、とてもじゃないけれどできない。


 広い範囲で盗賊行為をしていた連中なので、本来なら一帯を治める領主の元へ連行するべきだろう。

 ただ、最近はそうした盗賊が随分と野放しになっているくらい世の中が荒れている状態だ。


 ちゃんとした裁判が行われずに全員まとめて処刑、なんてこともあれば、逆に裏でよからぬやり取りがあって全員あっさり釈放、なんて可能性もあった。


〈万が一、更生できなかったなら、追放するなり奴隷にして働かせるなりすればよいでしょう。ちなみに村人鑑定で愛村心を見れば、ある程度の更生具合は判断可能です〉

「うーん、そっか……」


 色々と悩んだけれど、ひとまずガイドが言う通り、彼らを村人にしてみることにした。


「ていうか、相手が納得しなくても村人にできるものなの?」

〈村の中に一定時間以上滞在していれば、強制的に村人にすることが可能です〉


 え、それって、なんか怖くない?

 例えば旅人であっても、しばらく村にいると勝手に村人にさせられるってことだよね?


〈ただし愛村心の低い村人は、村から一定時間離れると自動的に村人ではなくなります〉

「なるほど、じゃあ別にいいのかな……?」


 何となく腑に落ちないものを感じつつも、僕はとりあえず納得する。


〈では、盗賊たちを村人にしますか?〉


 僕が頷くと、


〈バロンを代表する43人が村人になりました〉

〈パンパカパーン! おめでとうございます! 村人の数が300人を超えましたので、村レベルが5になりました〉

〈レベルアップボーナスとして、500村ポイントを獲得しました〉

〈作成できる施設が追加されました〉

〈最大村面積が増加しました〉

〈スキル「施設カスタマイズ」を習得しました〉


 どうやら村レベルが上がったらしい。


「施設カスタマイズ……?」

〈施設を任意にカスタマイズすることが可能です〉


 今まで作成できる施設は、最初からデザインされたものだけだった。

 例えば土塀は長さや奥行き、高さが決まっていて、微調整することはできなかった。


 それがこのスキルがあると、長さや奥行きを少し変化させてみたり、湾曲させてみたり、さらには色を塗り変えたりすることもできるという。


「へえ、それなら土塀を一つだけ作って、どんどん長さを伸ばしていったら複数の土塀を作成する必要なくなるのかな?」

〈ただし、カスタマイズの内容次第では、村ポイントが必要となります〉

「あ、そうなの」


 詳しく確認してみると、以下の通りらしい。


・施設の形状変化は村ポイント不要

・新規の継ぎ足しは村ポイントが必要

・単純な削除は村ポイント不要

・色を変えるのは村ポイント不要


「なるほど。確かに継ぎ足しにポイントが要らないなら、幾らでも節約できちゃうもんね」


 家屋でトイレの場所を変えたり、トイレを削除するのにポイントは不要だけど、トイレを二つにするにはポイントが必要、みたいな感じらしい。

 細かいことは後で実際に試して確認していこう。


 ひとまずはガイドに教えてもらった通り、更生施設を作成することにした。

 一度に全員は大変なので、比較的問題が少なそうな盗賊から五人ずつ、この更生施設に入れていくことに。


「いっひっひっひ、それならあたしに任せておくといいよ。こいつらをちゃんと真人間にしてあげるからねぇ……いっひっひっひっ」

「「「~~~~っ!」」」


 彼らの指導に名乗りを上げたのは、最年長のおばあちゃんだった。

 盗賊たちが思い切り顔を引き攣らせているけど……大丈夫かな?

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