第132話 無制限ってわけにはいかないです
「は、橋が一瞬で……」
ミシェルさんが呆然としている。
「あの……ルーク様? 何というか、もの凄く気軽にギフトを使っておられる印象なんですけど……施設を作るにはポイントなるものが必要なのでは……?」
「はい。なので無制限ってわけにはいかないです」
「そ、そうですよねー、さすがに」
「まぁでも、これくらいの橋なら今すぐ一万本は作れますけど」
「い、一万本……っ!?」
レベルアップボーナスで300000村ポイント入ったばかりだしね。
それに村人の数が三万人を超えているので、毎日30000ポイント以上入ってくる。
もちろん、これからまだまだギフトを使わないといけないので、そんな無駄遣いはしないけれど。
ダムも作らなくちゃだし。
「ありがとうございます! これで楽に川を行き来することができます!」
村長さんからは泣いて喜ばれた。
どうやらこの川には、時々、半魚人の魔物サハギンが現れるらしい。
渡河中に襲われて、毎年必ず何人かが命を落とすそうだ。
小さな渡し舟だと命懸けだね……。
なので罪人が漕ぎ手をさせられているのだという。
川の上流までやってきた。
「この辺でいいかな?」
〈村ポイントを600消費し、ダムを作成しますか? ▼はい いいえ〉
はい、を選ぶと、そこに巨大なダムが出現する。
「……は、はは……(いやいやいや、予想してた十倍はデカかったんだけどおおおおおおっ!?)」
突如として川を占領してしまった巨大建造物を前に、なぜか乾いたような笑いを零すミシェルさん。
ダムにはすでに半分くらいまで水が貯えられている。
どこから現れたのか分からない水だ。
……もしかして貯水量自動調整って、流入量や放水量を調節して適度な貯水量を保つってことじゃなくて、水そのものを作り出したり消失させたりして調節してくれるってこと?
そんなことが可能なら、どんな大豪雨が来ても、ダムは絶対にいっぱいになることはないわけだけど……。
あり得ないとは言い切れない。
だって井戸や家屋などでは水が無限に使えるし、施設カスタマイズで水堀を削除する際は水自体も消えてなくなるし。
「村長さん、これで恐らくはもう洪水に悩まされることはないと思いますよ」
「ああ、ありがとうございます……ありがとうございます……」
まるで神様を拝むかのように、跪いて感謝されてしまった。
と、そのとき。
ガサガサと近くの樹木が揺れたかと思うと、そこから大きな影がぬっと現れた。
身の丈三メートル近い巨大な熊だ。
血に飢えているのか、鋭い牙の間からぽたぽたと唾液を滴らせている。
恐らく僕たちの匂いを嗅ぎつけ、森の奥から出てきたのだろう。
「ま、魔物だっ!」
「ブラッドグリズリーだぞっ!?」
叫んだのはミシェルさんの護衛として同行していた兵士たち。
「こいつは危険な魔物です! 我々だけで討伐できるか……」
「い、今のうちにお逃げ下さい!」
「あ、大丈夫だよ」
「ルーク様っ!?」
驚く兵士たちを余所に、僕はその熊へと近づいていく。
「グルアアアアアアアガッ!?」
躍りかかってきたところへ石垣を作り出してやると、頭からそれに激突した。
さらに石垣をカスタマイズしてゴーレムに変形させ、目を回している熊を殴りつける。
「クゥン……」
敵わないと理解したのか、ふら付きながらも森の奥へと逃げていった。
「ご、ゴーレム……? これは……ルーク様が……?」
「はい。ギフトを応用したんですが、あれくらいの魔物なら追い払えます」
「(えええ……そのギフトちょっと万能すぎませんかねぇ……)」
「さて。こんなところですかね」
北郡全域を村に、そして全住民を村人にし、さらには主要な街の生活環境や街と街を結ぶ道路などを作り替えた。
ダムや橋など、途中で予定外の要望にも応えていたため、思っていたより時間がかかってしまったけれど、これでかなり暮らしやすくなったはずだ。
「とはいえ、あくまで最低限といったところなので、また何か必要なことがあれば連絡くださいね」
「……ありがとうございます……ありがとうございます……」
最後にはミシェルさんにまで、神様を拝むような勢いで感謝されてしまった。
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