第215話 何でオレを出場させなかった
本戦一回戦、その第一試合が始まった。
それもいきなりの好カードだ。
フィリアさんVSハゼナさんである。
「先日の遺跡調査で貴殿の実力はよく分かっている。楽しい戦いになりそうだ」
「そうね! 本戦に相応しい戦いにしましょ!」
二人は遺跡調査のときに共闘しているので、ある程度は互いの手の内を知っている関係だ。
フィリアさんは『弓技』と『緑魔法』のダブルギフト。
風を味方に放つ強力で正確な矢が持ち味で、当然ながら遠距離での戦いが得意だ。
一方のハゼナさんは『赤魔法』のギフト持ち。
これは遠距離でも威力を発揮できなくはないけれど、近いほど高火力で、離れるとどうしても勢いが落ちてしまう。
うーん、どう考えてもハゼナさんの方が不利かな。
そもそも火は風とあまり相性がよくないからね。
どんな戦いになるのだろうと思っていると、試合開始と同時に両者が動いた。
フィリアさんは風の矢を、そしてハゼナさんは火の矢を次々と撃ち放ったのだ。
リングの中心で二種類の矢が引っ切り無しに激突し、その度に爆音とともに火花が飛び散った。
そのインパクトのある光景に、観客が大いに沸いた。
だけど手数も威力も、明らかにフィリアさんの方が凌駕している。
その証拠に、フィリアさんには一切火の矢が届くことはないけれど、ハゼナさんの方には何本か風の矢が飛んできていて、それをステップで回避しているくらいだ。
しかもフィリアさんはまだ本物の矢の方は温存している。
数に限りがあることもあって、隙を窺っているのだろう。
「っ! 放った!」
ほとんど目で追えない速さで矢を番えたかと思うと、風を纏った超高速の矢がハゼナさん目がけて飛んでいった。
ギリギリでそれに気づいて、ハゼナさんは身を投げ出すようにして何とかそれを躱す。
速い上に、飛び散る火花のせいで視界が悪いのだろう。
今のは何とか回避したけど、このままじゃいつまでも持たない気がする。
「さすがに遠距離からの打ち合いは分が悪いみたいね! だけど、これならどうかしら!?」
ハゼナさんもそれを悟ったようで、そこから勝負に出た。
「ファイアジャベリン!」
最も得意としている炎の槍を、いきなりフィリアさん目がけて繰り出したかと思うと、それを盾にする形で、自分自身もフィリアさんとの距離を詰めたのだ。
そこからは痺れるような戦いが繰り広げられた。
魔法使いながら一か八かの接近戦を挑むハゼナさんと、どうにか距離を取って戦おうとするフィリアさん。
その激しい攻防に、観客は第一試合ながら大盛り上がりだ。
最後は、ハゼナさんの特攻を躱し切ったフィリアさんが勝ちを修めたけれど、ガス欠となって力尽きたハゼナさんにも盛大な拍手が送られた。
「良い戦いだったね。一回戦とは思えないくらい」
僕もそんなふうに満足していると、
「おい、随分と面白れぇことやってんじゃねぇか、ルーク」
「って、ラウル!?」
後ろから声がして振り返ると、そこにいたのはラウルだ。
どうやら彼もわざわざ王都から見にきたらしい。
「何でオレを出場させなかった?」
「いやいや、一応出場資格があるのはこの村の住人だけだからさ」
「ちっ」
舌打ちして席に腰を下ろすラウル。
ここで観戦するつもりのようだ。
第二試合が決着すると、続く第三試合でバルラットさんが登場した。
対戦相手も強かったけれど、最後はバルラットさんが勝利。
そして第四試合には、ノエルくんが登場。
盾だけでどうやって戦うのだろうと疑問だったけれど、盾を前にした強烈な突進で、対戦相手を場外まで吹き飛ばすという荒業で勝ちを治めていた。
第五試合でガイさんが、第六試合ではセレンが勝ち上がる。
そのセレンの対戦相手がゴアテさんだった。
凄まじい怪力でめちゃくちゃ巨大な鉄の棒をぶん回し、会場を大いに沸かせたのだけれど、セレンには通じなかった。
「相手に恵まれなかったな」
早々の敗退ながらも、ゴアテさんは清々しい顔でノエルくんに託す。
「ノエル、俺の分まで任せたぞ」
「うん、任せて」
年の離れた友情関係に、ゴリちゃんが「ああん、素敵ねぇ♡」と腰をくねらせていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます