第389話 新幹線だ

 村の大聖堂に参拝に来る人が増えた。

 それもちょっとやそっとの増え方じゃない。


 大聖堂内には礼拝堂が幾つもあって、一度に三万人も収容できるはずなのだけれど、常に大満員で、大聖堂前の広場には順番待ちの行列ができるほどだった。


「ねぇ、ちょっとさすがに多すぎない? この村、まるで聖地みたいになってる気がするんだけど……?」


 王国各地やキョウ国からの参拝客は以前から多かったけれど、最近は他の国からも参拝に訪れる人が増えていた。

 もちろん普通に観光や商売に来る人も増えているものの、それ以上に大聖堂を目当てに訪れる人の増加量が上回っている印象だ。


 完全にキャパオーバーになってしまったので、コピー&ペーストを使って、同じ大聖堂を村の反対側に作成することに。


「おおっ!? まったく瓜二つの大聖堂が一瞬にして現れたぞ!?」

「なんということだ……ああ、これが神の力か……」


 するとその様子を見ていた参拝者たちが、その場に跪いて涙を流し始める。

 いや、そんなに感動するようなことじゃないと思うけど……。


 さらに彼らのために、大聖堂近くに専用のホテルを作ることに。


「今度は幾つも建物が!」

「やはり神の御業……」


 うーん、いちいち感動されちゃう……。


 当然のように移住者もどんどん増えていた。

 城壁を動かして村を広げ、新しくマンションを建設していく。


 僕ももはや完全には把握し切れていないのだけれど、たぶんすでに二十万に近い人が、この村に定住しているような状態だ。

 参拝や観光などでの滞在者も含めると、三十万くらいになるかもしれない。


「セルティアの王都でも五万人だよ? どうなってるの?」


 かつてミリアと二人きりで、小屋が一つしかなかった頃が遠い昔のように思える。

 まだあれから二年ちょっとしか経っていないのだ。


 その事実に思わず戦慄していると、


〈パンパカパーン! おめでとうございます! 村人の数が10000000人を超えましたので、村レベルが14になりました〉

〈レベルアップボーナスとして、100000000村ポイントを獲得しました〉

〈作成できる施設が追加されました〉

〈村面積が増加しました〉

〈スキル「影武者生成Ⅱ」を習得しました〉


「えっ、もうレベルアップしたの!?」


 もう慣れてきたはずのレベルアップに、僕は大いに驚いてしまった。

 だってつい先日、レベルが13に上がったばかりなのだ。


「レベルが上がるにつれて、段々とレベルアップしにくくなるものだよね? むしろ過去最短クラスのような……」


 だけど思い出してみると、先日ローダ王国も含む各国の国民たちを村人に登録したことで、すでに900万人ほどになっていた。

 本当は帝国の侵略を止めるまでの一時的な措置だったはずなのに、その後、登録したままにしてほしいと各国からお願いされたのである。


 つまり、残り100万人くらいでレベルアップできる状態だったということ。


「いや、だからって100万人も一気に増える……?」


 






―――――――――――――

 高速鉄道(200) 新幹線車両(1000) 闘技場(3000) 村議事堂(3000) 大規模農場(5000)

―――――――――――――

〈高速鉄道:新幹線を走らせるための道。人や貨物を高速で大量輸送できる。魔物の接近防止機能〉

〈新幹線車両:高速鉄道を走る車両。トイレ付き。全席禁煙〉

〈闘技場:闘技のための施設。即死防止機能。魔物の自動ポップ機能〉

〈村議事堂:村議会のための施設。民意を適切に反映し、より良い村を作りましょう!〉

〈大規模農場:大規模な農地。作物の成長速度および品質アップ。農業機械付き〉


 新しく作れるようになった施設は上記の通りだった。


「新幹線だ」


 今や国境を越えるほどの長距離移動が当たり前になりつつある。

 だけどこれまでの鉄道では、どうしても長い時間、乗っていなければならなかった。


 最近開通したこの村とローダ王国の王都では、途中停車なしの全速力(時速150キロほど)で、十時間近くもかかってしまう。

 まぁ、それでもこの世界の感覚だと、めちゃくちゃ速いのだけれど。


「よし、今ある鉄道の一部を新幹線に変えてしまおう」


―――――――――――――――――――

コミック版『生まれた直後に捨てられたけど、前世が大賢者だったので余裕で生きてます』の8巻、本日発売です!  よろしくお願いします!

https://www.earthstar.co.jp/service/detail/item-8360/

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る