第13話 牢屋にぶち込んでおいてください
新しい村人たちが恐る恐るできたての長屋に入っていくのを見ながら。
「さて、畑をもっと広げておこう」
今の四面分では、五十人を超える村人を食べさせていくとなるとギリギリだろう。
村を拡張させて空いた場所に、僕はどんどん畑を作成していった。
「ひとまず全部で十面もあれば大丈夫かな?」
できあがった畑は、村の半分近くを占めていた。
種を蒔くのが大変そう……まぁ、新しく増えた村人たちにやってもらえばいいか。
元の村では農業を営んでいたみたいだし、僕なんかよりずっと詳しいだろう。
「後は……そうだ。なんか、スキル? みたいなのもう一つ覚えていたっけ」
スキル「配置移動」は、一度作成した施設を好きな場所に移動させることができるという、かなり便利なものだった。
「この「村人鑑定」っていうのは、どんなものなんだろう?」
〈村人を鑑定することが可能です〉
「鑑定って?」
〈実際にやってみることをお勧めします。対象となる村人を見ながら、「鑑定」と口にしていただければ発動します〉
ちょうどいいところへ、ベルリットさんがやってきた。
「村長様、この畑は……?」
「人数も増えたし、新しく増やしたんです。ゆっくり身体を休めてからで構いませんので、種蒔きを手伝ってもらえると嬉しいです」
「もちろんお手伝いします! 食事ばかりか、寝床まで与えていただいたのです。この御恩に報いようと、みんな喜んで働くことでしょう」
「うん、でも、無理はしないでくださいね?」
鼻息荒く言うベルリットさんを見つめながら、僕は「鑑定」と小さく呟いた。
ベルリット
年齢:36歳
愛村心:高
適正職業:まとめ役
ギフト:なし
するとそんな文字が視界の端に浮かび上がってくる。
名前と年齢までは分かる。
でも、愛村心って何だ……?
〈村への忠誠心や帰属意識のことです〉
つまり「高」ってことは、すでにこの村のことを良く思ってくれているってこと?
〈そうなります。愛村心が低い村人は、犯罪行為に走ったり、反乱を起こしたりするため、気を付けてください〉
そ、そうか……。
考えてみたら、村の人が増えるとそういう危険性も出てくるよね。
でも、このスキルがあれば兆候を知ることができるってことか。
心の中を覗き見るようで嫌だけれど……。
〈なお、反抗的な村人は牢屋にぶち込んでおいてください〉
……うん、そう言えば、レベル3で牢屋を作成できるようになったんだっけ。
必要になるような機会が来ないことを願おう。
〈適正職業というのは、言葉通りその村人に適した職業のことです〉
つまりそれが「まとめ役」になっているベルリットさんは、まさに今のポジションが適任ってことか。
〈適正職業が「農業」になっている村人には畑仕事などを、「衛兵」になっている村人には警備や取り締まりなどの仕事を任せるといいでしょう〉
ていうか、そんなのが簡単に分かっちゃっていいの……?
めちゃくちゃ凄い能力じゃ……。
それだけで一つの有力なギフトに匹敵するかもしれない。
あくまで村人限定ということみたいだけど。
翌日、僕は新しく増えた村人たちを村の中心に集めていた。
こんな風に大勢が集合できる広場として使えるように、スペースを開けておいたのだ。
「おはようございます、ベルリットさん。昨晩はよく休めましたか?」
「はい、村長様に立派な寝床をいただいたお陰で、久しぶりにちゃんと眠ることができました。しばらくずっと野宿が続いておりましたので……」
長屋の一部屋はあまり広くないし、大丈夫かなと思っていたけど、彼らにとっては寝床があるだけでも天国だったみたいだ。
きっと大変な思いをしながらここまで来たのだろう。
「それはよかったです。えっと、それで一応、今後のために皆さん一人一人のことを把握しておきたくてですね。名前や年齢、性別、家族構成なんかを知っておけば、お仕事の割り振りもしやすいかな、と」
「おお、それはそうですね。しかしそれなら、私の方でやりますが……」
「いえ、村長として、できるだけ全員の顔を覚えておきたいですから」
そうして僕は、新しく増えた村人たちから個人情報を聞き出し、一人ずつ記録していった。
と同時に、僕はこっそり全員に村人鑑定を使っていく。
七人目を村人鑑定したところで、僕はあっと驚かされた。
バルラット
年齢:32歳
愛村心:高
適正職業:戦士
ギフト:(剣技)
……ギフトの項目に、カッコつきの「剣技」がある?
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