第236話 デカ過ぎねぇか
「ええと、それで、ララお姉ちゃんに聞いたんだけど、今年はなかなか農作物の略奪が上手くいかずに困ってるんだって?」
僕は誤魔化すように話題を変えた。
もし怪しまれて、性別を確認するとか言われたら最悪だし。
「……ああ。どうやら今年はなかなか作物の育ちが悪いみてぇでな。お陰でどの村もあたしらのことをかなり警戒してやがる」
「例年より罠も多くて、だからあたしも引っかかっちまったんだ」
「それはてめぇが間抜けだからだろ!」
「ひっ」
喧嘩はやめて!
「となると、自前で作物を育てられればいいってことだね」
「あ? それができねぇから苦労してんだろうが。この辺りはロクな畑が作れねぇんだよ」
「まぁ見ててよ」
僕はリリさんを説得し、集落の一画を貸してもらった。
それほど広くないスペースだけれど、ひとまずここで上手くやってみせれば、信用してくれるようになるだろう。
「畑を作るね」
〈畑:良質な土の耕作地。作物の成長速度および品質アップ〉
草がぽつぽつと生えるだけだったその土地が、一瞬にして高品質の畑へと生まれ変わる。
「……は?」
唖然としているリリさんを余所に、僕はさらに施設グレードアップのスキルを使い、「作物の生育速度」「作物の品質」「作業効率」のすべての性能を大きく引き上げておいた。
「じゃあ、種を植えてくから、ララお姉ちゃんも協力してくれるかな?」
「あ、ああ、分かった!」
僕が道路を作ったのを見ていたこともあって、すぐにフリーズ状態から立ち直ったララさんが種植えを手伝ってくれる。
村から持ってきた種だ。
「うわっ、何だこれ!? この畑の中だと普段より速く動けるぞ!?」
作業効率を上げていたので、ものの数分で終わってしまった。
「たぶん、三十分もしたら芽が出てきて、三日もあれば収穫できると思うよ」
――三日後。
集落の一画に作った畑に、大量の作物が実っていた。
大きさは普通でも数が多かったり、通常より遥かに巨大だったりして、土が見えないほどに埋め尽くされている。
この集落に住む獣人たちは三百人ほどだというので、この小さな畑だけでも十分に彼女たちのお腹を満たせるかもしれない。
「ま、マジで作物ができちまった……てか、デカ過ぎねぇか?」
「ほら、リリ姉さん! あたしが言った通りだろ! ルークはすげぇんだって!」
「い、いや、ただデカいだけで、中身がスカスカだったり、味がクソマズかったりするんじゃねぇか?」
リリさんが真っ赤なトマト一個を毟り取って、そのまま齧りついた。
「~~~~~~~~~~~~~~っ!?」
「リリ姉さん!? まさか、毒でも……」
「う、うめええええええええええええええええええええええええっ!!」
「っ!?」
リリさんは目を剥いて叫んだ。
「何だ、この強烈な甘さは!? それでいて酸味もしっかりしていて、しかもこの瑞々しさとトロトロの果肉っ! こんなトマト今まで食ったことねぇぞ!?」
その声を聞いて、他の獣人たちも我先にと畑内へ殺到していった。
食糧不足でお腹が空いていたのかもしれない。
「「「うまあああああああああああああああいっ!?」」」
生のままの野菜に齧りついては、次々と驚きの声を上げていく。
「気に入ってくれたみたいだね。だけど摘まみ食いはそれくらいにしておいて、まずは収穫していこう!」
そして彼女たちにも手伝ってもらって、作物を収穫していった。
「こんなにたくさん野菜が手に入るなんて!」
「しかも簡単に!」
「加えてめちゃくちゃ美味い!」
「これならこの冬も乗り越えられそうね!」
喜ぶ彼女たちは、すぐに採れたての作物を使って料理を作ろうとする。
「あ、それならこれを使ってよ」
僕は屋外調理場を作った。
〈屋外調理場:屋外に設けられた屋根付き調理場。作業効率および料理の味アップ〉
「一体どこから現れたんだ!?」
「何だ、ここは!? 物凄く使いやすくて、作業が捗る!」
「ここなら美味い料理をたくさん作れそうだ!」
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